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<せんだい進行形>蔵元、海外に活路 国内需要減と日本食ブーム後押し

内ケ崎酒造店を訪れたイスラエルの輸入業者に応対する内ケ崎さん(右)ら
優花さんが英語で日本酒について解説する動画アプリ
新沢醸造店は1升1700円の本醸造酒から「零響」まで幅広い価格帯の商品を海外展開する

 日本酒の輸出が伸びている。背景にあるのは海外での日本食ブームに加え、人口減少に伴う国内需要の縮小も重なる。仙台圏をはじめ宮城県内の蔵元は、それぞれの戦略で意欲的に海外展開を進める。(報道部・丸山磨美)

■代理店頼み脱却、アプリで飲食店に解説

 「国内需要が今後大幅に伸びる要素はない。将来的には国内と海外の出荷割合を半々まで持っていきたい」。仙台伊沢家勝山酒造(仙台市)の伊沢平蔵社長(59)は言う。輸出先は欧米や東南アジアなど約20カ国。売上高3億3000万円(19年6月期)のうち、海外分が20%弱を占める。
 10年以上前から取り組む海外輸出に手応えを感じたのは5年ほど前。現在は海外担当を務める長女優花さん(25)の米国ニューヨーク留学がきっかけだった。
 代理店頼みの営業を脱し、優花さんは現地の飲食店を回り卸先を開拓。店のスタッフに日本酒の知識を伝えるなどした結果、売り上げが急激に伸びた。現在は「ニューヨークのトップ100とされる和食店の7割に納入している」という。
 同社の日本酒は比較的高価な上、輸送費なども上乗せされるが「海外はワインの土壌があり、高い酒が売れる魅力的な市場」と伊沢社長。優花さんが開発したスマートフォン用の日本酒動画学習アプリなどで現地飲食店スタッフの知識を広げつつ、ハワイなど新たな市場の開拓を進める。

■難しい流通過程での品質保持

 「伯楽星」で知られる新沢醸造店(大崎市)も、売上高に占める海外分の割合が15%に迫る。要因の一つが、昨年11月発売の「世界最高精米」をうたう精米歩合0.85%の純米大吟醸酒「零響(れいきょう)」。500ミリリットル入りで税抜き35万円という異例の商品で、限定300本のうち200本をアジアと欧米に振り向けた。
 「世界に挑戦するには、誰かのまねではない圧倒的な個性と魅力が必要だ」と新沢巌夫社長(44)。留学経験者ら英語が堪能な人材の採用を進め、社員全員が海外で交渉できる体制を目指している。
 輸出先が17カ国に広がる中、課題は流通過程での品質保持。常温で保管され風味が変わったとの情報を得ると、現地に出向いて在庫を買い取り、処分する。「こちらが意図する味で飲んでほしい」と、新沢社長は品質追求の重要性を説く。
 2000年代初めから米国を中心に輸出を手掛けてきた県内最古の酒蔵、内ケ崎酒造店(富谷市)は、売り上げの約15%が海外出荷分。今後は30%に引き上げようと、東南アジア市場に目を向ける。
 新たにイスラエルなどとの取引も始まったが、代表社員の内ケ崎研さん(69)は「急激な拡大より、安定した取引の継続が大事」と話す。生産現場を実際に見てもらうなど、「売る人、飲む人への教育なしには、日本酒のシェアは増えていかない」と指摘する。
 近年、人手不足などで国内の物流環境は悪化している。「規模の小さいメーカーは運送業者の確保や港湾へのスムーズな搬入が難しく、年々コストが上がっている」。輸出機運に水を差す問題に懸念を示す。

◎宮城産の輸出は東北最少の13万リットル

 仙台国税局によると、宮城の日本酒(清酒)の輸出数量は2014年の9万3752リットルから17年の13万6857リットルへと年々増えているが、東北6県では最も少ない。中国が東京電力福島第1原発事故から続ける輸入規制の影響もあるが、製造数に対する輸出の割合は1.5%程度にとどまる。
 宮城は規模の小さい蔵元が多く、「輸出に通年対応できない」「国内向けで手いっぱいで輸出拡大の必要性を感じていない」といったケースが目立つという。
 財務省の貿易統計によると、18年の日本酒(清酒)輸出数量の2万5746キロリットル、総額約222億3200万円はともに9年連続で過去最高。一方で国内の販売数量は減り続け、国税庁によると17年度は52万6000キロリットルと1980年度の3分の1以下だ。
 日本酒造組合中央会の副会長を務め、輸出振興などを担当する佐浦(塩釜市)の佐浦弘一社長(56)は「国内市場が縮小する分、海外市場や訪日外国人旅行者(インバウンド)への取り組みの重要性は増している。認知度は格段に高まっており、チャンスでもある」と指摘する。


◎海外のコンテストで2冠 勝山酒造・伊沢平蔵社長「受賞生かし浸透図る」

 仙台伊沢家勝山酒造(仙台市)の日本酒が7月、世界で最も権威があるとされる英国のワインコンテスト「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」の日本酒部門と、フランスの日本酒コンクール「Kura Master(クラマスター)」でそれぞれ最高賞を受賞した。2冠を達成した酒蔵は初めて。伊沢平蔵社長(59)に聞いた。

 −純米吟醸酒「勝山 献」がIWCの「チャンピオン・サケ」を、純米大吟醸酒「勝山 伝」がクラマスターの「プレジデント賞」を受賞した。
 「私たちの酒造りが海外でも認められてうれしく思う。海外市場に一層自信を持って挑むことができる」
 「IWCはワインの物差しがベースにあり、クラマスターはフランス人にとっておいしいかどうか。献は上品で雑味のないうま味が特徴。伝はより目鼻立ちがはっきりして、強さ、味の濃さが感じられる。クラマスターには献も出品したが、より味の濃い伝が選ばれた。ふくよかで、透明感がある点が理解された」

 −醸造アルコールを添加しない純米酒に注力している。
 「日本酒本来の形で、アルコール添加の酒にはないふくよかなうま味がある。食中酒として料理とも調和しやすい。海外で日本酒を扱う業者にはアルコール添加に否定的な反応もあり、米が原料の純米酒は説明しやすく、納得されやすい」

 −海外のコンテストに挑戦する意義は。
 「コンテストを通して酒を知ってもらうことが重要。審査基準が日本と違うことを踏まえた上で、自分たちのスタイルは崩さずに改良していくことが進化につながる。フランスはここ数年、日本酒が急激に伸びており、受賞をうまく生かして浸透を図りたい」


2019年09月13日金曜日


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