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<東日本大震災復興人>津波犠牲、次こそ防ぐ 研究の原点に小児がん体験

浮力のある防災用品(手前)の開発など、津波による犠牲を防ぐ研究に取り組む門廻さん=仙台市青葉区の東北大災害研

◎仙台市青葉区・東北大災害科学国際研究所助教 門廻充侍さん(29)

 死因や遺体発見場所など膨大なデータと向き合い、東日本大震災の犠牲者一人一人の最期の状況を探る。
 東北大災害科学国際研究所助教の門廻(せと)充侍(しゅうじ)さん(29)=津波工学=は「生存学」を掲げる津波防災研究の最前線に立つ。
 「どうすれば犠牲を防げるか。津波襲来の状況などとの関連を分析し、具体的に命を守る手段を見いだしたい」
 大阪府出身。関西大大学院社会安全研究科を経て、昨年1月に着任した。宮城県警から提供を受けた9527人の検視データを基に、震災による県内の犠牲者の死亡状況を分析する研究プロジェクトを昨秋から率いている。
 犠牲者の9割は溺死だった。残る1割の死因は、がれきなどによる頭部損傷や、低体温症、焼死などだ。町並みや地形との関連など、がれきが発生しやすい要因や溺死以外の背景を分析し、「適切な救助方法や、犠牲者を出さないための町のデザインを提案したい」と説明する。
 病気で自ら生死と向き合った体験が研究の原点だ。小学4年で小児がんを発症。長期間入院し、やりたかった野球を諦めた。手術や抗がん剤治療を経て回復したものの、同じ病室で過ごした子は亡くなった。
 「人の死や命の重さを肌で感じた自分だからこそ、犠牲者や遺族の思いを想像し、少しでも寄り添う研究をしたい」と強く思う。
 学会で死因別のデータなどを発表する際も、率だけでなく、人数を示すことを心掛ける。「死因に多数派も少数派もない。一人一人の命と向き合う視点を発信し続けたい」との思いからだ。
 さまざまな縁にも導かれた。関西大システム理工学部3年時、社会に貢献できると考え、防災に関心を持った。大学院で学ぼうと、2011年3月11日、津波防災を専門とする教授の研究室を訪れた直後に震災が発生した。
 4月、教授らの調査に同行し、被災直後の気仙沼市に入った。日常が破壊された光景に強い衝撃を受け、津波防災、命を守る研究は自分にとって「必然」となった。
 南海トラフ巨大地震に関する研究で博士号を取得した17年、東北大災害研の教員公募を知り、応募した。「亡くなった人からの教訓を、次世代や次の災害にどうつなげるか」。研究者として責務を感じている。
 研究の傍ら、小児がんの子どもたちを支援する活動にも携わる。防災に関する市民向けの講演で自らの闘病体験を語り、防災研究に至った思いを伝えている。
 「防災は目的ではない。大切な命やそれぞれの日常を守るために防災がある」。原点を胸に刻み、未来の命を救う研究に挑み続ける。
(報道部・菊池春子)


◎描く未来図 浮く防災品を開発

 震災で犠牲になった人々のデータから、自分たちは社会に対して何を伝えられるのか。成果を出し、発信し続けたい。南海トラフ巨大地震などでは津波到達時間が早く、従来の避難行動では間に合わない可能性が高い。浮力のある非常用持ち出し袋など、防災用品の開発にも力を入れたい。


2019年09月13日金曜日


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