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クマはなぜ捕殺されたのか 住宅地の周辺で異常な行動

麻酔銃で眠らせ捕獲したクマを入れた木箱を運ぶ警察官=8月30日午後1時30分ごろ、仙台市泉区加茂2丁目

 「クマはなぜ、捕殺されてしまったのか」。仙台市宮城野区の無職男性(65)から「読者とともに 特別報道室」に質問が届いた。泉区の住宅街で8月に何度も出没したクマを、生きたまま自然に返すことはできなかったのか。市は人間への警戒心が薄れたクマの生態を踏まえ、住民の安全確保を優先。専門業者の判断を基に捕殺を実行した。

 泉区加茂2丁目の住宅街の近くで8月30日、体長約1メートル、生後約2年程度の雄のクマ1頭が捕らえられた。
 クマは当日朝、民家の近くで目撃された。現場が宅地に隣接していることから、市は業者に協力を依頼し麻酔銃でクマを眠らせ、いったん捕獲。市内の別の場所に運び、安全な方法で死なせたという。
 市環境共生課の担当者は「山に戻した場合、再び住宅地に出没する恐れがあった。住民の安全を考慮した」と説明する。野生鳥獣調査を専門に手掛ける業者に判断を仰ぎ、「住宅街の周辺で日中に何度も出没したクマの行動は異常」との指摘を受けて捕殺に踏み切った。
 加茂地区や近隣の虹の丘地区などでは8月、クマの目撃情報が相次ぎ、市や警察が注意を呼び掛けていた。不安を募らせていた住民の間には、捕殺はやむなしとする声が多い。
 加茂地区に住む70代男性は「住民の不安は大きかった。捕殺には複雑な気持ちもあるが、安心と安全が一番優先されるべきだと思う」と訴える。同地区の60代男性も「人がクマと共存するのは難しいと思う。人や農作物が被害を受ける動物であれば、捕殺は仕方ないのではないか」と語った。(野界航也)

■山へ返すには住民の了承必要、射殺は場所など制約

 宮城県自然保護課によると、昨年度は県内で約90頭のクマが捕獲された。同課の担当者は「捕殺したケースが珍しくない」と言う。山林などに放す選択も検討するが、再び住宅地に出没する恐れのない場所が限られるためという。
 同課によると、クマを捕獲するのは、人的被害が発生または発生の恐れがあり、目撃現場周辺にクマがとどまっている場合だ。
 捕獲したクマを山などに放す場合は、自治体や住民に了承を得なければならない。「住民らの反発が強ければ、捕殺以外に選択肢がない」と担当者は話す。
 現場で射殺するには法律の制約がある。鳥獣保護管理法は射殺に用いる銃を使用できない条件として(1)日の出前、日没後(2)住宅地や駅など人や建物の密集地(3)人や建物、乗り物などに流れ弾が当たる危険性のある場所−を定めている。
 この法律に則して7月19日、気仙沼市の山中で農業男性(88)を襲って死亡させたクマが地元の猟友会によって射殺された。
 一般に、クマは行動範囲が広く、適応力や学習能力が高いとされる。一度餌を取れることを知ると、すぐに都市部の環境に適応する。泉区加茂地区のケースも、餌を求め行動範囲が広がり、民家周辺などに出没したと考えられる。
 宮城県はホームページで、クマの生態や目撃情報などを随時、公開している。仙台市も独自の「クマ出没情報マップ」を作り、最新の情報を提供している。市の担当者は「クマの生態や対策などの理解を深めてほしい」と呼び掛ける。


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2019年09月14日土曜日


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