青森のニュース

青森のリンゴ通年販売 黄信号 有袋栽培の割合低下

有袋栽培を続ける弘前市のリンゴ園。青森県内では手間やコストから実施率が低下している=5日

 青森県で、リンゴに袋をかぶせて育てる有袋栽培の実施率が低下している。少子高齢化などによる労働力不足で手間がかかる袋掛け作業が敬遠されているためだ。有袋栽培したリンゴは貯蔵できる期間が長く、年間を通しての販売が可能。県りんご果樹課は「通年販売は青森県の強み。有袋率の低下を食い止めたい」と話す。
(青森総局・八巻愛知)

 有袋栽培はリンゴの実を病害虫から守り、表面に傷がつきにくい。日光が遮られるため熟し過ぎず、袋をかぶせない無袋栽培より貯蔵性が高い。収穫した翌年の2月ごろから市場に出せる利点がある。

■「割に合わない」

 問題は袋代や人件費などのコストと労力。6月中旬〜7月中旬に大量の実に袋を掛け終えるには技術と経験が求められ、若手農家は手を出しづらい。無袋栽培が食味の良さから消費者に好まれることも、有袋離れに拍車を掛けている。
 2010年以降の県内の有袋率はグラフの通り。17、18年は、実や葉に黒い斑点が生じる黒星病への対応に追われて有袋栽培が大幅に減った。18年は1990年の統計開始以降、初めて20%を下回った。
 一般的に無袋栽培に比べて有袋の取引額は1箱(20キロ)当たり800〜1200円高いが、脚立に上り袋を掛ける作業の負担は大きい。コストも勘案し「割に合わない」と考える農家は多い。
 弘前市でリンゴ栽培を手掛ける男性(63)は、3年前に有袋栽培をやめた。男性は「昔は近所の人を雇って作業していたが、みんな高齢になった。家族だけでは作業し切れない。若い農家には、かぶせ方を知らない人もいるだろう」と話す。
 県りんご果樹課によると、70年代に県が主導して無袋栽培を推進した時期があった。産地間競争に負けないよう味重視の栽培と低コスト化を図るのが目的だった。関係者は「当時は8割以上が有袋。ここまで下がるとは誰も思わなかった」とこぼす。
 有袋栽培がほとんどだった県産リンゴは、2〜7月の後期販売をメインとしてきた。わせ品種が市場に出回るまでの間、国内のリンゴ市場は青森産の独壇場だった。

■輸入品に危機感

 有袋リンゴの供給量の減少は輸入の増加を招いている。農林水産省の統計によると2019年1〜6月のリンゴの輸入量は3741トン。18年の1年間に輸入した3758トンに迫る勢いだ。
 県りんご協会の担当者は「ニュージーランドなどの外国産は実が小さいが味は国産と遜色ない。外国産に慣れ、消費者が後期を含めて年間を通して輸入品を選ぶようになる可能性もある」と危惧する。
 県は有袋栽培の回復に向けて農家への呼び掛けなどを行うが、弘前市の袋販売業「佐藤袋店」の佐藤義博社長(71)は「取り組みが足りない」と指摘する。「有袋栽培は日本のリンゴ産業を守ることにつながる。行政が主導して有袋栽培の技術を教える講座を開くことなどが必要だ」と訴える。
 りんご果樹課の今村友彦課長は「青森県は通年供給が基本にあり、これ以上有袋率が下がると通年販売が難しくなる。後期でも一定量をそろえなければならないので、農協やりんご協会などと連携して20%を維持したい」と話す。


関連ページ: 青森 経済

2019年09月15日日曜日


先頭に戻る