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「沈黙感じさせる作品を」 仙台短編文学賞選考委員・柳美里さん

[ゆう・みり]1968年茨城県生まれ、横浜市育ち。高校中退後、劇団「東京キッドブラザーズ」に入団。93年「魚の祭」で岸田国士戯曲賞、96年「フルハウス」で泉鏡花文学賞と野間文芸新人賞、97年「家族シネマ」で芥川賞。近著に「沈黙の作法」。15年に鎌倉市から南相馬市に転居し、自宅で書店「フルハウス」を開く。

 3回目を迎えた仙台短編文学賞(実行委員会主催)は11月15日まで作品を受け付けている。今回選考委員を務めるのは南相馬市の芥川賞作家柳美里さん(51)。仙台市内での記者会見で語った、選考の抱負や応募作への期待、小説観を紹介する。

 −作家デビュー25年目で初めての小説の選考委員。引き受けた理由は。
 「いくらキャリアを重ねても、賞に応募する新人と自分は書き手として同列と思っているので、上の立場からの選考はできないと今までオファーを断ってきた。かつては50歳ぐらいから人生の仕上げに入るのだろうと考えていたが、東日本大震災と福島第1原発事故が起き、自分の起承転結から『結』を捨てた。これからは全て他者、被災者の要請に応じ、自分のできる範囲を押し広げていくという生き方に変えた」

 −募集要項にある「仙台、宮城、東北と何らかの関連がある作品」をどう見ますか。
 「仙台を舞台にする必要はない、緩やかな制約が非常に面白い。自分の経験で言うと、自由に書くよりも制約がある方が楽しい。東北は広く、全く異なる豊かな文化を持つ。制約はむしろ土地や人との機縁。そこを足場に生まれる創意にわくわくする」

 −どんな小説を求めますか。
 「沈黙を感じさせる作品が読みたい。震災後の12年3月から南相馬の臨時災害放送局で住民に話を聞く番組を持ち、聞くだけでなく差し向かいで長い沈黙を共有する時間を過ごした。震災や原発事故の記憶を今も語れない人は多い。震災を書く書かないにかかわらず、言葉にできないものと向かい合う時間を経た作品を選びたい」
 「切断面が鮮やかな短編を期待する。起承転結がなくてもいい。『起』だけをすぱっと切断するやり方でもいい」

 −小説を書く喜びとは。
 「たくさんの人と一緒に見る演劇と違って、本のページをめくるのは1人だけ。作家と読者の1対1の密な関係が築けるのは魅力。私の書いた登場人物を読み『自分のことが書かれている。これは私の物語だ』と思ってくれる人と出会うかもしれない。その可能性が広がることは素晴らしい」

 −地方文学賞の意義をどう考えますか。
 「作家は東京や関西の大都市に集中しているが、小説は本来どこでも書ける。作家は全国に散ってその土地の風景を取り入れた作品を書いた方がいいと思っている。それが文化の発信にもなる。昔と違って原稿を手渡しする必要はなく、メールで済む。文学賞が契機となり、東北に住んで書いてみようという人が現れればいい。文学賞は長く続いてほしい」

【仙台短編文学賞応募要項】ジャンル不問で未発表の小説を募集。原稿用紙25〜35枚程度。選考結果は2020年3月に発表する。大賞の副賞は30万円。大賞受賞作は河北新報、「Kappo仙台闊歩」「小説すばる」に掲載される。連絡先は実行委事務局022(266)0912。


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2019年08月20日火曜日


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