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<消費税率10% 混迷・東北の現場から>(上)軽減税率/価格複雑 広がる不安

消費税増税を前に、レジ近くに設けられた持ち帰り用商品のPRコーナー=仙台市青葉区のまるまつ南吉成店

 消費税率が8%から10%に引き上げられる10月1日まで2週間を切った。初めて導入される軽減税率、キャッシュレス推進と抱き合わせによるポイント還元で税制は複雑化を極め、東北の事業者は翻弄(ほんろう)される。増税分を中小下請けに押し付ける買いたたきは起きないか、消費のさらなる冷え込みを招かないか−。2度の延期を経て決行される消費税増税で混迷する東北経済の現場を見た。

■「税抜き」主流

 店内飲食は10%、持ち帰りなら8%。
 軽減税率でハンディを背負う外食業界は、価格表示や販売戦略に神経をとがらせる。
 カルラ(宮城県富谷市)が展開する和風レストラン「まるまつ」は、従来通り税抜き価格のみを記載することにした。客には分かりにくいが、価格据え置きを強調したい飲食店では税抜き価格が主流になる。
 伊藤真市専務は「すしと天ぷらの『にぎわい御膳』(998円)など、主力の御膳メニューは本体価格が1000円以下。(税込み表示で)視覚的に高い印象を与えるのは避けたい」と明かす。
 「守り」の方策ばかり考えてもいられない。まるまつは持ち帰りニーズの高まりを見込み、9月から新たに人気メニューを弁当にして販売を始めた。牛タンやはらこ飯は容器を豪華にし、価格を高めに設定するという「攻め」の姿勢も垣間見える。
 「増税後はただでさえ外食支出が落ち込む。中食や内食傾向が強まる機会に顧客を逃さない」。伊藤専務は力を込める。
 二通りの税率に、多様な価格設定や表示が入り乱れる。大手外食チェーンの対応が分かれる中、小規模な飲食店にも困惑は広がる。
 仙台市青葉区国分町で居酒屋を営む秋山昭一さん(40)は「全ての従業員が軽減税率の仕組みを理解できるかどうか」と不安を漏らす。
 秋山さんの店舗では持ち帰り品も販売しており、軽減税率を適用する。一方、通常通り注文した料理を持ち帰る場合には適用されない。国税庁の指針では「食事の提供」か「持ち帰り」かどうかは飲食料品の提供時点で判断されるからだ。
 秋山さんは「現場への教育を徹底しないと、従業員が誤った対応をしかねない。トラブルを回避するために持ち帰りを遠慮いただくのも手かもしれないが…」と気をもむ。

■性善説は限界

 二重税率に困惑するのは小売りも同様だ。イートインにのみ10%を課す方式は、トラブルを生む懸念が早くから指摘されてきた。
 宮城県内でパン店を展開するパンセ(仙台市)は、イートインスペースやテラスが人気。無料のコーヒーも付く。増税後、店で食べる場合は申し出てもらって10%を課すが、8%で買ってテラスで食べてしまう客も想定される。
 「初めは後ろめたさで申し出てくれても、慣れると変わるかもしれない」。遠藤裕紀経営管理室長は「性善説」の限界を危惧する。
 ヤマザワ(山形市)、マックスバリュ東北(秋田市)などスーパー各社も、店内飲食の申し出があった場合に10%を課すが、ヨークベニマル(福島県郡山市)は「対応は非公表」と説明。販売現場と消費者双方が、互いの出方を探り合う状況は続きそうだ。
(報道部・天艸央子、高橋一樹)


[軽減税率]消費税率引き上げに伴う家計の負担軽減を図る目的で、外食や酒類を除く飲食料品、定期購読の新聞の税率を据え置く措置。欧州などで例があり、日本では今回初めて導入される。場合によっては容器に通常税率を課すなど、適用範囲は細かく定められる。


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2019年09月19日木曜日


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