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<消費税率10% 混迷・東北の現場から>(中)価格転嫁/値下げ圧力 中小懸念

商店主(右)に価格転嫁への注意を呼び掛けるGメン=仙台市太白区の長町1丁目商店街

 消費税率が10%に引き上げられる10月1日が迫る。岩手県の食品メーカーの社長が不安を口にする。
 「小売業者間の価格競争やポイント還元が過熱すると、増税分の値下げを求められるかもしれない」

■「Gメン」増強

 同社はスーパーなどに加工食品を納入する。増税後も外食を除く飲食料品の税率は8%に据え置かれるが、店側が値引きに踏み切る場合、その分の負担を強いられるとの懸念がある。
 政府は昨年、増税に伴う価格設定の指針を公表。「消費税還元セール」などの表現を禁止する一方、消費税と直接関連付けない「10月以降2%値下げ」といった表現の値引きセールを認めた。2014年4月の8%への増税後に生じた消費の落ち込みを避ける狙いだ。
 今年10月から来年6月まで実施されるポイント還元も安値競争に拍車を掛ける。中小企業で買い物をし、キャッシュレス決済をした消費者には5%が還元される。大企業は顧客を奪われかねないと値引きなどの対抗策を講じる。
 納入業者に増税分の値下げを強要することは法律で禁止されているが、宮城県の経済団体幹部は「増税分だけでなく、より発覚しにくい本体価格を下げるよう圧力をかける事態もあり得る。中小は取引継続のために了承せざるを得ない」と危機感をあらわにする。
 東北経済産業局消費税転嫁対策室によると、東北では買いたたきなどの転嫁拒否行為に絡み、13年10月から今年7月までの累計で立ち入り検査182件、指導67件を実施。うち2件で再発防止策を講じるよう勧告した。
 立ち入り検査のピークは8%に増税された14年度で71件。18年度は13件だった。同室は今回、不当な買いたたきなどを監視する「Gメン」を4人増の24人体制に増強した。
 遠藤敬治室長は「民間企業を経験した人材を配置し、増税に備えている。立場の弱い中小企業に不利益が出ないよう、監視活動に注力する」と語る。

■好機との声も

 東日本大震災で被災した太平洋沿岸部。基幹産業である水産加工業者は、人手不足や原材料高騰によるコスト増に苦悩する。工場再建に活用した補助事業の自己負担分の返済が本格化する中、販路喪失が重なって事業継続を諦める業者も目立つ。
 「増税は値上げに踏み切るにはちょうど良いタイミングだ」と話すのは、岩手県の水産加工会社の社長。取引先の小売業者は「商品が売れなくなる」として値上げに応じてこなかった。サンマやサバといった主力魚種の水揚げが減少し、仕入れ値が上がっているにもかかわらず、だ。
 「被災地の水産加工業者はこれまで値上げを我慢してきた。増税により、スーパーや卸業者に話を切り出しやすくなる。多くの業者が同じ考えではないか」。社長は苦境脱出に期待を込める。(報道部・高橋公彦)

[消費税増税の価格転嫁]消費税率の引き上げ分を企業が販売価格に上乗せすること。2013年10月施行の転嫁対策特別措置法は、大企業が下請けなどに納入価格の据え置きを迫る「買いたたき」の取り締まりのほか、買いたたきなどの転嫁拒否を誘発しかねないとして「消費税還元」などとうたうセールの禁止を盛り込んだ。14年4月の8%への増税時は、セール全般の禁止と解釈した小売業者が値引きを自粛。駆け込み需要や反動減が重なり消費低迷が長引いた。


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2019年09月20日金曜日


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