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<クレプトマニアの実情>繰り返される罪と病(上)制御不能/盗みたい衝動 心支配 

店頭に並ぶ商品(右)と交番のコラージュ。警察官に事情を聴かれた直後に万引をしたケースもあるという

 食品や洋服などを盗む衝動を抑え切れず万引を繰り返す。「クレプトマニア」(窃盗症)と呼ばれる精神障害だ。自分が病気と気付かないまま逮捕され、服役を繰り返すケースが少なくない。「自分では治せない。でも抜け出したい」。苦悩する当事者を回復に導き、再犯を防ぐ手だてはあるのか。患者と医療、司法。それぞれの実情を探る。(報道部・宮崎伸一)

■交番帰りに万引

 「寝ても覚めても盗むことばかり考えていた」
 宮城県出身の女性(30)は1年前、窃盗罪で有罪判決を受けた。今も執行猶予中の身だ。
 万引をするためにスーパーに通う日が続いた。カートに食品を山盛りに積む。レジを通さずに店を出て、リュックに詰め替える。そのまま別の店に足を運び、盗みを働くこともあった。
 10年前、仙台市で1人暮らしを始めた。ストレスから食べては吐くことが癖になった。摂食障害だった。「吐いてしまう食品にお金を使いたくない」と思うようになった。
 いつからか盗み自体が目的になった。対象は食品から洋服、書籍に広がった。悪事と分かってはいても「盗みたい」という衝動に逆らえなかった。
 盗みの最中は夢中で罪悪感はない。万引して家に帰ると「警察が来るのではないか」という恐怖心が芽生えた。呼び鈴が鳴るたびに不安を募らせる生活を送っていたという。
 何度も警備員に見つかった。交番に連れて行かれて「二度としない」と誓う。だが、帰り道にスーパーがあると万引をした。「店や商品が目に入ると衝動が収まらなかった。自分の意思で止められなかった」と打ち明ける。

■家庭内に問題も

 窃盗症の患者には、虐待や両親の不仲などの問題を抱える家庭で育ったケースが少なくない。
 秋田県出身の別の女性(45)は、酒に酔った父親から何度も暴力を受けた。幼い頃から、家庭内のストレスを発散するために万引を繰り返した。
 27歳で膠原(こうげん)病を発症。治療薬が原因で太り始めた。体形を戻そうと食べては吐き、やはり摂食障害に。当初は食費を浮かせるのが目的だった窃盗行為に、快感を覚えるようになった。これまでに常習累犯窃盗罪などで4回服役した。
 3回目の服役後、窃盗症と診断された。治療を受けられないまま再犯で刑務所に戻った。今春出所し、入院するなどして治療を続ける。「自分の力だけでは治らない。医師や患者仲間の力を借りて窃盗症から脱したい」。女性の言葉は悲鳴にも似た響きを伴っていた。

[クレプトマニア(窃盗症)]衝動に駆られ、常習的に盗みを繰り返す精神障害。経済的な目的だけでなく、スリルや成功した際の達成感などに快感を覚え、盗み自体が目的になるとされる。摂食障害との関連が指摘され、アルコールや薬物など、複数の依存症を併発する「クロス・アディクション(嗜癖=しへき)」の事例も報告されている。


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2019年09月23日月曜日


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