宮城のニュース

<宮城野ウイーク>仙台・燕沢「のりあい・つばめ」乗車ルポ 暮らしの「足」に期待

通院や買い物で乗り合い交通を使いこなす吉田さん(右)。「出歩くのが楽しみになった」と話す

 仙台市宮城野区燕沢地区の乗り合い交通「のりあい・つばめ」に住民が期待を寄せている。昨年10月に試験運行が始まった地域交通。丘陵地で急な坂道が多い地区を縫うように走り、住民の足として暮らしを支える。路線バスが通らない「公共交通空白地」の救世主となるか。燕沢地区の試行錯誤には他地区の注目も集まる。今月18日に乗車し、現状を取材した。(報道部・上村千春)

 起終点の仙台オープン病院に着くと、10人乗りジャンボタクシーが待っていた。午前8時41分発の第2便。「のりあい・つばめ」のプレートが車体に貼ってあった。車高が大きく乗り込みにくいためか、乗車の際は踏み台が用意された。
 記者を乗せ、定刻をやや遅れて出発。「次は、みやぎ生協鶴ケ谷店前に停車します」。停留所が近づくたび、地元の女性が吹き込んだ車内アナウンスが流れた。スピードはゆっくり、のどかなドライブが続く。
 5番目の停留所「鶴ケ谷7丁目東」で女性1人が乗車した。乗り合い交通はタクシーと違うが、男性運転手に「燕沢コミュニティ・センターまで」と行き先を告げ、回数券を手渡した。
 燕沢地区に入ると、道幅が狭くなった。「菖蒲沢集会所前」「菖蒲沢中央」停留所で60〜80代の女性4人が乗り込み、車内はにぎやかに。多賀城市の東北歴史博物館に向かうグループでJR東仙台駅で降りた。
 乗り合い交通を使いこなす「達人」にも出会った。同地区の無職吉田美江子さん(82)は、通院や買い物で運行日はほぼ毎日利用する。乗車の際は、自宅から徒歩5分にある二つの停留所を時間帯、行き先により使い分けているという。
 吉田さんは「試験運行が始まって、落語を聞きに行ったり友人の家を訪ねたり、出歩く回数が増えた。毎日が楽しくなった」とうれしそうに語った。
 坂道が続く地区内を1周し、約1時間でオープン病院に戻った。運転手は「車内が住民の交流の場になっている」と明かした。互いに席を譲り、降りれば手を振って見送る。燕沢地区の住民に地域交通への愛着が芽生え始めている。

[のりあい・つばめ]仙台市宮城野区燕沢地区が本格運行を目指す乗り合い交通。昨年10〜11月に試験運行の第1弾、今年4〜9月に第2弾を実施し、10月2日に第3弾の開始を控える。第2弾は毎週火、水、金曜の午前8時台〜午後5時台に計8便を運行する。停留所は計27カ所。仙台オープン病院を起終点にJR東仙台駅に乗り入れる。燕沢地区内は外回りと内回りが交互に走る。運賃は1回200円均一。回数券や定期券も販売する。

◎本格運行利用者増が鍵

 燕沢地区の乗り合い交通「のりあい・つばめ」は、市の地域交通支援事業を活用し、本格運行を目指す。運行経費に占める収入の割合「収支率」の目標を設定し、試験運行や実証運行に段階的に取り組む。住民の高齢化で地域交通の必要性は高まる一方だが、運行事業は決して順調ではない。
 昨年10〜11月の試験運行第1弾は、1日40人の乗車目標に平均49人が利用し、次の段階に進める条件の収支率20%をクリアした。
 だが、現在の第2弾(今年4〜9月)は1日平均35人程度にとどまる。企業協賛金や関連グッズの販売など運賃以外の収入で、収支率は条件の30%を達成する見通しだが、課題を残す。
 住民が買い物や通院などに「のりあい・つばめ」を利用し、地域交通が暮らしに根付くには多少時間がかかりそうだ。運行主体の燕沢地区交通検討会は、さまざまな利用促進策を打ち出し、安定的な運営を目指す。
 大西憲三会長(73)は「市補助金や企業協賛金に頼りすぎず、利用する住民を増やすことで地域交通を定着させたい」と意気込む。


関連ページ: 宮城 社会

2019年09月24日火曜日


先頭に戻る