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<手探りの自治>災害公営住宅は今(1)維持管理/遠のく集会所 負担大

鍵を市に返し、使われることが少なくなった桜木災害公営住宅の集会所=多賀城市

 閉め切られた集会所の台所や机にカビが生えた。室内に響いていた笑い声も今は聞こえない。
 4棟に計160戸の集合住宅が入る多賀城市の桜木災害公営住宅。自治会副会長の伊藤正徳さん(65)は2017年6月、住宅1階にある集会所の鍵を市に返した。以来、住民の利用はめっきり減った。

■利用が固定化

 分厚いコンクリートで仕切られた集合住宅にとって、集会所は住民が気軽に集える「リビング」に例えられる。
 「交流の場という市の言い分は分かるし、市の指導に反することに葛藤もある。それでも自治会で管理するのは無理だ」。伊藤さんが、そんな諦めを抱くようになった理由がある。
 桜木住宅は14年10月、市内第1号の災害公営住宅として完成した。集会所では交流を促す催しが頻繁にあり、入居当初は違和感がなかった。
 催しの回数、参加者ともに減ったある日、伊藤さんは住民の共益費で賄う集会所の維持費に目を疑った。15年度は70万円、24時間空調を止めた16年度も65万円。面積が470平方メートルと広く、維持費は他の集会所(20万〜30万円)の倍以上だった。
 桜木住宅にはミニ集会所が各棟ごとにあり、こちらの維持費も年30万円かかる。過剰投資に思えた。
 「災害公営住宅は生活の苦しい人たちの集まり。集会所の維持費は1世帯当たり月360円ほどだが、利用者が固定化し、使わない人には負担でしかない」と伊藤さんは言う。
 集会所の維持管理は今、多賀城市が担う。市条例は自治会が管理するとうたっており、市は「管理放棄」との認識だ。
 だが、市が昨年11月に行った住民調査は市幹部を凍り付かせた。「集会所を利用したいか」との問いに「はい」が27世帯、「いいえ」は倍近い48世帯もあった。市地域コミュニティ課の柴田光起課長(49)は「顔なじみの関係を築くまで長期戦になる」と覚悟する。

■際限ない役割

 17年3月から31戸が入居する塩釜市の北浜災害公営住宅も、集会所の管理を市に委ねている。今春設立された自治会の会長を務める自営業阿部利也さん(51)が日々感じるのは「守備範囲に際限がない」との戸惑いだった。
 隣人トラブル、騒音、車へのいたずら…。住民から次々と苦情や相談が持ち込まれる。いら立つ住民の矢面に立つのは「自治会長」の肩書を持つ阿部さんしかいなかった。
 塩釜市からは自治会の発足を機に、集会所の鍵や維持費の管理を自治会で担うよう求められたが断った。「他の役員も仕事を持っていて日中のやりとりはできない。ボランティアの身でどこまでやればいいのか」
 先日、孤独死が出た自治会の会長から「あんたがちゃんとしないから」となじられたという話を聞いた。「同じ立場の人がどれだけ苦労しているのだろうか」。阿部さんはこう推し量り、わが身を重ね合わせる。(報道部・高橋鉄男)

 岩手、宮城、福島3県で98.5%が完成し、約5万人が暮らす災害公営住宅(復興公営住宅)。集合住宅で初めて生活する被災者も多く、住民の手で運営する道のりは平たんでない。壁にぶつかりながら模索する現場をリポートする。(5回続き)


2019年09月24日火曜日


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