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<東電強制起訴・無罪判決>識者の視点/教訓よりも経済追認

よけもと・まさふみ 1971年、横浜市生まれ。一橋大大学院経済学研究科博士課程修了。2013年4月から現職。専門は環境政策論、環境経済学。日本環境会議事務局次長。著書に「公害から福島を考える」(岩波書店)。

◎大阪市立大大学院教授 除本理史氏(48)

 津波予見や事故回避の可能性を認めず、各地の民事訴訟判決から大きく後退した判断だ。東京電力福島第1原発事故の被害の重大性を裁判官が十分認識しなかったのではないか。被害者は納得できず、電力会社が「原発は安全」と説明してきたこととも矛盾する。
 事故後、避難計画が不十分なまま原発再稼働が進む。裁判は過酷な避難を強いられた患者らの犠牲を取り上げたが、今も事故の教訓が生かされていない。判決は事業者や国のこうした姿勢を追認する内容だ。
 原発は安全対策費などのコストが膨らむが、電力会社には初期投資を回収したいとの思いもある。電力会社の姿勢には事故後も「経済優先」の意思が強く働いていると感じる。
 東電旧経営陣の場合、津波対策の必要性については現場担当者から繰り返し報告が上がっていた。経営者がどこまで現場からの問題提起を受け止め、対策を実行できるか。甚大な被害を引き起こす危険性のある事業の経営者は、正しくそれを判断する責任がある。
 真相解明や責任追及の場は刑事裁判だけではない。国会や政府、民事訴訟など各方面で継続して進めていくことが望ましい。

 


2019年09月24日火曜日


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