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<東電強制起訴・無罪判決>識者の視点/真実に光 裁判に意義

そえだ・たかし 1964年、松江市生まれ。大阪大大学院基礎工学研究科修士課程修了。90年朝日新聞社入社。地震や原発の取材に当たり、2011年5月からフリー。原発事故の国会事故調で協力調査員として津波分野を担当。

◎サイエンスライター 添田孝史氏(55)

 判決は原発事業者の最高経営層の責任や安全対策への姿勢、見識に触れておらず、被害者らが期待していた司法の役割を果たしていない。不親切だと感じる。
 司法が科学の不確実性を裁くことができるのか、ずっと疑問だった。国の地震予測「長期評価」の信頼性を裁判所が「ない」と断言してしまっていいのか。
 地震の確実な予測は今の科学技術では不可能で、不確実さを前提にいかに対策を講じるかが重要だ。特に原発事業者は、万が一の事態にも備えが求められる。
 38回の公判では、刑事裁判で初めて明らかになったことがとても多かった。東京電力の社内メールや会議の議事録が証拠として提出され、旧経営陣の意思決定について誰が何を言ったのかなどの詳細が分かった。
 本来であれば、政府や国会などが設置した事故調査委員会がしっかりと務めを果たすべきだった。事故調の失敗も、今回の事故の大きな教訓の一つと言える。
 刑事裁判が開かれなかったら、原発事故全体の真実が闇に葬られていた。事故の全貌が明らかにされた裁判は意義があり、告訴・告発をした市民や「起訴すべきだ」とした検察審査会の功績も大きい。

 


2019年09月24日火曜日


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