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<クレプトマニアの実情>繰り返される罪と病(中)回復支援/患者同士 思いを共有 

治療の中心となるミーティングに参加する入院患者=7月下旬、赤城高原ホスピタル(写真の一部を加工しています)

 クレプトマニア(窃盗症)の治療に取り組む群馬県渋川市の赤城高原ホスピタルには、窃盗症の疑いのある人が全国から訪れる。現在は、約40人の窃盗症患者が入院している。
 治療の中心は「ミーティング」と呼ばれる患者同士の語り合いだ。

■包み隠さず話す

 幼い頃に受けた虐待、盗みを犯したときの体験などを包み隠さず話し、聞く側はどんな話も否定せず、受け入れるように努める。
 7月下旬、院内のミーティングルームに20〜70代の男女13人が集まった。ホワイトボードに大きく、「仲間の大切さ」というテーマが記される。「今でも盗みたいという衝動がある」。参加者は自分の思いを打ち明け始めた。
 同病院の竹村道夫院長は「正直な自分を受け入れてくれる仲間がいることで、患者の心は回復に向かう。窃盗症は専門的な治療によって回復する精神障害であることを知ってほしい」と強調する。
 国内で治療が必要な窃盗症の人数は不明だが、相当数に上るとの見方がある。治療を手掛ける医療機関はわずかで、回復支援が進まない実態がある。

■自助活動を開始

 東北6県で唯一の拠点は仙台市青葉区の東北会病院だ。2017年7月に窃盗症患者を対象にした「クレプトマニア再発予防プログラム」を始めた。週1回ミーティングを開き、毎回5人程度が参加する。
 「盗み癖が直らない」と薬物依存症や摂食障害の患者から相談を受けたのがプログラム創設のきっかけだった。窃盗症の治療に当たる施設が地域になかったことも考慮した。
 プログラムの参加者が中心となり昨年、患者の自助グループ「KA(クレプトマニアクス・アノニマス)仙台」の活動を始め、支援に厚みが増している。
 「信頼できる医師や窃盗症と闘う仲間が近くにいるのは心強い。ここ2年間は万引をしていない」。窃盗罪で服役経験がある参加者の女性(45)が語る。
 東北では窃盗症そのものを知らない人が多く、潜在的な患者は多いとみられる。長年、多くの依存症患者の回復を支援してきた東北会病院の石川達院長は「治療の拠点を各地に増やすことが今後の課題だ」と指摘する。

[万引の摘発者と窃盗症]2018年版犯罪白書によると、17年に全国の警察に刑法犯などで摘発された21万5003人のうち、万引による摘発者は6万6154人で、全体の30.8%を占めた。窃盗症の人数をまとめた統計は国内になく、米国の精神医学会の診察マニュアル(MSD−5)には、万引で逮捕された容疑者の4〜24%が窃盗症というデータがある。

[クレプトマニア(窃盗症)]衝動に駆られ、常習的に盗みを繰り返す精神障害。経済的な目的だけでなく、スリルや成功した際の達成感などに快感を覚え、盗み自体が目的になるとされる。摂食障害との関連が指摘され、アルコールや薬物など、複数の依存症を併発する「クロス・アディクション(嗜癖=しへき)」の事例も報告されている。


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2019年09月24日火曜日


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