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<手探りの自治>災害公営住宅は今(3)共益費/住民が徴収 心身疲弊

浄化槽に詰まっていたごみを調べる藁谷さん。一部の居住者に重い負担がのしかかる=いわき市

 団地内の汚水を処理する浄化槽のそばには、ごみが積み上がっていた。
 「妻とゆっくり余生を過ごそうと思っていた。浄化槽の管理人になるために入居したわけじゃない」
 一戸建てと集合住宅合わせて189戸が並ぶいわき市の永崎災害公営住宅。自治会長の藁谷(わらがい)鉄雄さん(77)がため息をつく。

■トラブル頻発

 永崎住宅ではトイレに流せないはずの布きれやおむつが浄化槽に詰まるトラブルが頻発。2015年10月の入居開始から6回目となるポンプ交換が必要になった5月下旬、これまで市が受け持っていた交換を自治会が担うよう求められた。
 市条例は、共用施設の修繕費用を市の負担と定めるが、住民に責任がある場合は例外とする。「これだけ続くのは異常。使い方に問題がある」というのが市の言い分だ。
 ポンプの交換費用は約24万円。藁谷さんは自治会の緊急総会を開き、月額で一戸建て3000円、集合住宅3500円だった共益費を一律4000円に引き上げざるを得なかった。
 「使い方の問題と言われればその通りだが、一部住民の行為で自治会全体が負担を強いられるのは厳しい」。藁谷さんの表情に疲れがにじむ。
 公営住宅では、共用部分の水道光熱費や消耗品の交換費は共益費として住民が支払う。民間の賃貸住宅では家賃などと併せて徴収されるが、公営住宅は主に自治会が金額の設定から徴収や管理まで全て任され、負担が重くのしかかる。

■「一括」できず

 「未納者に居留守を使われ、借金の取り立てをしているようだ」。48戸が並ぶ多賀城市の新田災害公営住宅の自治会では、共益費の徴収業務で心身をすり減らした会計2人が辞め、欠員になったままだ。
 自治会長の佐藤正人さん(70)は市内3団地の会長と連名で昨年12月、共益費を家賃と一括で徴収するよう市に陳情した。回答は「自治会の役割」と取り付く島もなかった。市は「徴収を代行する宮城県住宅供給公社のシステム改修が必要で、費用もかかる」と説明する。
 ただ高齢化が進む中、公営住宅の住民による共益費徴収は全国的な課題で、対策を取る自治体もある。愛知県は未納者問題を契機に、来年度から家賃との一括徴収に踏み切る。東日本大震災の被災自治体でも釜石市や仙台市が震災前から一括徴収している。
 釜石市の担当者は「導入の経緯は不明だが、入居者に徴収させる方法は負担になるとの考えがあったのでは」と話す。金額も本来の必要分より低く設定し、不足分を市が支出する。
 佐藤さんは月々の徴収だけでなく、将来必要になる共用部の消耗品の交換費にも不安を抱く。
 「お金はトラブルの元。被災者が平穏な生活を取り戻せるよう、行政は真剣に考えてほしい」
 住民に共通する思いを、佐藤さんが代弁する。
(報道部・高木大毅)

 岩手、宮城、福島3県で98.5%が完成し、約5万人が暮らす災害公営住宅(復興公営住宅)。集合住宅で初めて生活する被災者も多く、住民の手で運営する道のりは平たんでない。壁にぶつかりながら模索する現場をリポートする。(5回続き)


2019年09月26日木曜日


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