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<暮らしの中の動物たち>[10]牛(中)中耳炎の治療 試行錯誤

生まれてまだ数日の子牛(写真を一部加工しています)

 人間の子どもと子牛とには、意外な共通点があります。それは、どちらも中耳炎になりやすいことです。しかも、中耳炎は成長とともにかかりにくくなることも共通しています。人間の子どもは10歳くらい、子牛は生後10カ月くらいから、かかりにくくなります。
 子牛の中耳炎は治療が厄介です。この治療法が最も良いという決め手となるものがありません。私も子牛の中耳炎の治療では、随分と試行錯誤しながら取り組みました。
 中耳炎は中耳に細菌がすみ着き、うみがたまる病気です。簡単に考えれば、うみを出してやればいいということになります。それには鼓膜を破る必要がありますが、破って治療した方が良いとする考えと、破らないで治療した方が良いとする考えに分かれるのです。
 鼓膜を破ってうみを出し、中耳を洗浄して薬剤を患部に投与するのが、最も良いと通常は考えたいのですが、人の治療では、鼓膜を破らないで治療するのがほとんどのようです。
 しかし、牛では鼓膜を破らない治療では効果が表れず、首が傾く斜頸といった症状や、ミルクが飲めなくなる神経症状、誤嚥(ごえん)して肺炎により死亡する例が多くみられます。
 私は中耳炎の治療をマニュアル化してみましたが、治療効果を上げる最大の方法は早期発見、早期治療です。どれだけ早期に、ごくわずかな小さな症状を見つけることができるかということに尽きます。中耳炎の治療ではそのことを切に感じました。
 中耳炎以外に牛で多い病気は、胃腸障害です。おいしい肉を作るために、牛が食べなくてもいいものを食べさせるわけですから、胃腸のトラブルは避けては通れません。
 特に怖いのは急性の鼓張症で、胃の内容物が異常発酵を起こして、あっという間に大量のガスが発生します。夜間にこの症状が起これば、朝、死亡した牛を発見することになります。
 早期に症状を見つけることができれば、胃の中のガス抜きを行い、命を助けることができます。しかし、処置するのが5分か10分遅くなったことで死亡する場合もある急性の疾患です。
 こんな牛たちの肉を、人間は食しています。おいしい牛肉を食べるとき、そこには感謝が必要ですね。
(獣医師・川村康浩)


2019年09月27日金曜日


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