宮城のニュース

津波防災 地元の技結集 気仙沼・鉄工業者ら 自立式防潮堤1号完成

地元企業が連携して気仙沼市内で完成させたフラップゲート

 気仙沼市が建設を進める防潮堤の陸こう(出入り口)に今夏、気仙沼鉄工機械協同組合加盟企業が手掛けた自立式防潮堤「フラップゲート」の第1号が完成した。「命を守りたい」。消防団員らが犠牲になった東日本大震災の悲劇を繰り返さないよう、地元企業が造船などで培った技術を結集させた。市は18漁港で整備中の防潮堤に計32基を導入する。

 建造は日立造船(大阪市)とライセンス契約を結んだ北斗と、藤田鉄工所、小野寺鉄工所の地元3社が中心となった。北斗の斎藤昭敏取締役工場長(57)は「高い技術力が要求されたが、津波で被災した地元にいいものを残したいという思いが原動力になっている」と明かす。
 大島にある駒形防潮堤の2カ所(通行幅4メートル)で据え付け作業を終えた。ステンレス製のゲートは高さ4.2メートル、幅4.6メートル。津波が押し寄せると寝かせた状態の扉が浮力によって立ち上がり、浸水を防ぐ。停電時も手動操作する必要がない。
 震災では、防潮堤の門扉を閉めようとした消防団員らが多数、津波に巻き込まれた。遠隔操作できるゲートも普及しているが、早く閉めると漁師らの避難を妨げる恐れがあるほか、市の試算で年5000万円程度となる維持費もネックとなっていた。
 市は維持費が安いフラップゲートに着目。「造船などで培った技術を生かしてほしい」と鉄工組合に働き掛けた。他の被災地でも同種ゲートを導入しているが、地元企業が連携して完成させるケースは珍しい。市は「地元企業が手掛ければメンテナンスにも安心感がある」と期待する。
 3社は国内初のトンネル状の陸こう用のゲートも建造中。日立造船の工場に何度も足を運びながら研究や実験を重ね、近く完成する見込みだ。
 鉄工組合の理事長を務める北斗の武田孝志社長(76)は震災で妻とき子さん=当時(63)=を失った。武田社長は「津波からは命を守ることが何より大事になる。地元企業が力を合わせて技術を磨き、信頼性の高いフラップゲートを造っていきたい」と話す。


2019年09月28日土曜日


先頭に戻る