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新設医学部の針路 発足4年東北医科薬科大/体験学習徹底、意欲育む

高齢者の訪問診療に同行する東北医科薬科大の学生(左上の2人)=石巻市雄勝地区

 東日本大震災の復興支援を目的に、国内で37年ぶりに医学部の新設が認められた仙台市青葉区の東北医科薬科大が発足4年目を迎えた。卒業後に最長10年以上、東北で働く学生が半数超を占める。国による医療再編の激流の中で「東北版・自治医大」と期待される大学の役割は何か。現状と展望を追った。(報道部・菊池春子)

■訪問診療に同行
 「痛みはどう?」
 「何ぼが良ぐなったよ」
 8月下旬、震災で被災した石巻市雄勝地区の高齢者宅で、石巻市立病院の末永拓郎医師(39)が90代の男性を診察した。傍らで、東北医科薬科大の医学部生2人が真剣なまなざしでやりとりを見つめた。
 訪問診療への同行は東北に貢献する「地域医療マインド」醸成に向け、同大が実施する「へき地・被災地医療体験学習」の一環だ。
 医師不足で、市雄勝診療所の診察は外来を含め週3日。地理的な事情で通院が難しい人も多い。
 総合診療が専門の末永医師は「不安やストレスで症状を悪化させる可能性もある。訪問診療が住民に与える安心感は大きい」と学生に説明した。
 宮城県内で10年間の勤務が条件の地域枠で入学した3年蛭田凌(りょう)さん(22)=千葉県出身=は、同行を通じて目的意識を高めた。「被災地で医師に何が求められるのか。将来像が具体的になった」と話す。
 東北の医療復興を目指した医学部新設から4年。医師の都市部への偏在解消や地域定着に向けた取り組みとして、大学は独自の体験学習のカリキュラムを展開する。
 石巻市立病院など東北の19基幹病院をネットワーク病院と位置付け、学生全員が2〜6年次にかけ、各医療圏域内の病院や診療所、高齢者施設などを訪問するのもその一つ。各地域の医療福祉事情を多面的に理解してもらうのが狙いだ。医学部発足時から体験学習に携わる住友和弘准教授(53)=地域医療学・総合診療=は「先輩がいない中で意欲ある学生が集まっている」と受け止める。
■全員が「担い手」
 厚生労働省は26日、診療実績が低く再編・統合の議論が必要な公的病院名を初公表した。だが、地方では住民の高い医療ニーズがありながら医師不足で稼働率が低い病院は少なくない。
 旭川医大でへき地医療を担う医師養成に携わった住友准教授は「受け入れ施設の関係者全員が『医師を育てる担い手』という意識を共有し、現状だけでなく今後地域で働く意義を伝える必要がある」と指摘する。
 学生らが地域貢献への意欲を高める一方、教育体制の拡充や受験生へのPRなどの課題は残る。
 定員100人に対し、東北の高校出身者は毎年3割程度。受験者は初年度の入学者選抜時の2278人から19年度は1575人と3割減った。少子化に加え国公立志向が根強く、私立の新設医学部の存在感をいかに打ち出すかを大学側は腐心する。
 学校法人東北医科薬科大理事長で同大の高柳元明学長(71)は「教育実績を積み重ねると同時に、高校訪問などを通じて奨学金や教育内容のPRを推進し、東北に貢献する優秀な人材を集めたい」と強調する。


[東北医科薬科大]東北薬科大が医学部を新設し、改称する形で2016年4月に発足。震災で被災した東北への医学部設置を巡り安倍晋三首相が13年10月、特例的な新設を検討するよう文部科学相に指示。文科省は14年6月に新医学部構想審査会を設置し同年8月、応募があった3団体から薬科大を選出した。


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2019年09月29日日曜日


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