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<東京検分録>ふるさと納税再考/ひずみ限界制度見直しを

 高額の返礼品で寄付をかき集めた大阪府泉佐野市と、手を焼く総務省の対立が続くふるさと納税制度。収束のヒントを探しに東北ゆかりの論客を訪ね、より良い在り方を再考した。
 「カニ、ウニ中心の返礼品では多様な産業の生産増に寄与せず、経済波及効果に十分結び付いていない」。北海道東北地域経済総合研究所(東京)は7月発行の機関誌に、北海道釧路市での調査報告を掲載した。
 伊藤敬幹理事長(62)=大仙市出身、前仙台市副市長=は「返礼品で地元産業が自治体依存を強め、かえって弱まる心配がある」と指摘。「地場産品」に限定せず、原料や部品の供給など地域に何か関連があれば認めるとともに、近隣との連携を含め、地域資源の活用で付加価値を高めた産品開発の検討を求める。
 「霞が関の裁量ではなく、国民の意思による都市から地方への合法的な資金移動は必要」と制度の趣旨は評価するが、「返礼品は寄付額の3割以下」というルールを疑問視。「税収や人口、産業の規模に応じ、自治体の受け入れ額に上限を設けてはどうか」と語る。
 「行政サービスが不可能になる恐れが出てきた。税制崩壊の段階に入ったというぐらい深刻」。東京都世田谷区の保坂展人区長(63)=仙台市出身=は「今だけ、自分だけもうかればいい、そんな唾棄すべき寄付文化の敵が制度に宿っている。いったん廃止して、出直すべきだ」と語気を強める。
 返礼品に頼らず政策本位で善意を募る一方、区民税の減収額は2019年度、約54億円に上る見込み。減収額の75%が地方交付税で補填(ほてん)される仕組みも、不交付団体の区には適用されず、純減となる。
 区の推計では、18年度の補填額は全国で約1564億円。保坂氏は「地方創生の基金を作り、ひも付きではない交付金にした方がずっと健全だ」と訴える。
 永田町にも矛先を向け「議論しない国会の怠慢。自民党であれば、今や実力者の官房長官にとても弓を引けないのだろう」。提唱者の菅義偉氏(湯沢市出身)を念頭に現状を嘆いた。
 「泉佐野市は総務省の『鏡』。自分で作った制度の姿が映っているだけ」と保坂氏。悪貨が良貨を駆逐するのは望ましい姿ではない。制度全体を抜本的に見直す局面だろう。東北も対岸の火事ではない。(東京支社・瀬川元章)


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2019年09月29日日曜日


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