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土石流、集落直撃 宮城・丸森廻倉地区 不明者を懸命に捜索

 かけがえのない命を奪った台風19号による被害の実態が、日を追うごとに明らかになってきた。犠牲者の数が日々更新され、今も山間部などで行方不明者の捜索が続けられている。住み慣れた家や町並みを一夜にして無残な姿に変えた巨大台風。ライフラインやインフラの被害も甚大で、いつ元の生活に戻れるのか−。被災者の苦悩は深まる一方だ。

 暗闇の山間部に地鳴りがとどろき、土石流が小さな集落を襲った。台風19号で被災した宮城県丸森町の廻倉(まわりぐら)地区。九死に一生を得た住民らが当時の状況を克明に語り、行方不明者の安否を案じた。
 「家ねえわ」
 台風が通過した13日早朝。大槻武光さん(50)は自宅から南に200メートル余り離れた隣人宅に足を運び、惨状に目を疑った。山頂付近から、車ほどの大きさの石や土が大量に流れ込んでいる。60代の大槻利子さん、90代の母竹子さんの2人暮らしの家が跡形もなく消えていた。
 母娘の姿が見当たらないばかりか、利子さんの妹で同町羽出庭(はでにわ)の小野正子さん=60代=、夫の新一さん=同=が台風襲来時、この家に身を寄せていたことも判明する。
 集落では複数の住民が12日午後9時10分ごろ、異様な音を耳にしていた。
 「ゴゴゴゴゴ」
 洗濯機の脱水時のような音が2〜3分は続いただろうか。外は滝のような雨。今度は「ガシャン!」という金属音が響いた。電柱が約50度に折れ曲がり、ガードレールとぶつかっていた。
 約1時間後にも地鳴りが聞こえた。山の別の場所が崩れ、土砂が武光さん方の庭を突き抜けていた。
 廻倉地区は山の斜面に張り付くように11戸が立ち並ぶ。生後間もない乳児から高齢者まで39人が力を合わせて暮らしていた。
 そのうち3家族13人が13日、自衛隊や宮城県警のヘリコプターに救助され、宮城県角田市や宮城県亘理町へ避難した。
 武光さんは言う。「またいつ大雨が降るか分からない。町内の山間部ではほかにも大きな被害が出ている。大事な家族の命を守ることを選んだ」
 同じく古里を離れた武光さんの父武夫さん(75)は「75年間生きてきたが、これほどの被害は初めて。まずは道路を復旧してもらわないと、生活再建が始まらない」と訴える。
 利子さん方の跡地付近で15日、警察が行方不明者の捜索を懸命に続けていた。流木や土砂を取り除き、男性とみられる遺体をストレッチャーに載せて運んだ。
 利子さんの長男恵太さん(36)=宮城県名取市=は同日、実家跡を訪れた。5〜6トンはありそうな岩が目に映る。「2歳の時におやじを亡くした。おかあは、母親と父親の両面を持つ力強い人。ばあちゃんは温厚で、俺が悪いことをしても最初に守ってくれた」と話す。
 小野さん夫婦の長女敦子さん(38)=丸森町=は「こうなってしまい残念。それでも懸命に捜索してくださっている。ただただありがたい」と涙を流して謝意を口にした。
(報道部・水野良将、亘理支局・庄子晃市、白石支局・村上俊)


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2019年10月16日水曜日


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