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黒い泥水、床一面に 「もう泣くしかない」 大郷・粕川

浸水した家屋では住民が土砂に漬かった家財の片付けに追われていた=15日午前10時30分ごろ、大郷町粕川

 台風19号の猛烈な雨で宮城県大郷町粕川地区を流れる吉田川が決壊してから3日目を迎えた15日、水が引き、一帯の惨状があらわになった。泥が覆い尽くし、変わり果てたわが家に肩を落とす住民。先行きの見えない不安を抱え、気の遠くなるような自宅の片付けに追われた。
 水を含んで重くなった畳を持ち上げると、黒い泥水が床一面に広がる。足元には、稲わらなどのごみが散乱。引き出しは濁り水であふれ、作業を阻む。
 「果たしてもう一度住めるようになるのだろうか」。粕川地区の会社員石森浩昭さん(48)夫婦は水浸しの床を見ながらつぶやいた。宅地の地盤などがどうなっているのかが心配だ。
 15日は家族6人に加え、親戚らも駆け付け、使えなくなった家具などを搬出し始めた。妻の千恵さん(45)は「避難所に住み続けるわけにはいかないし、仮設住宅もいつになるのか。片付けながら考えます」。ため息をつき、食器にたまった泥水を捨てた。
 決壊から一夜明けた14日にも、自宅を早く確認したいと足を運ぶ住民の姿があった。あちこちに大きな水たまりが残る。灯油タンクから燃料が流出し、ヘドロと混じって異臭が漂う。
 農業生産法人社長の高橋敏雄さん(67)は「きれいに流され、どこから手を付けていいか分からない。自衛隊やボランティアに助けてもらわないと片付けが終わらない」とぼやいた。
 決壊現場と目と鼻の先に住む会社員高橋郁雄さん(60)の自宅には多量の泥が入り込み「戻る場所がない」と絶句した。家族は無事だったが、高齢の両親を案じる。「近くに住める仮設住宅があれば」と願った。
 同じく自宅の様子を見た会社員水上彩さん(32)は「もう泣くしかない。必要なもの、使えるものがあれば持って帰る。先のことは考えられない。罹災(りさい)証明を取るため写真を撮るだけです」と言葉少なに話した。
(報道部・吉田尚史、栗原支局・門田一徳、加美支局・佐藤理史)


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2019年10月16日水曜日


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