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沿岸3選挙区は無投票 復興の論戦不発に

防災集団移転団地での第一声を終え遊説に向かう候補を見送る支持者=18日午前9時55分ごろ、東松島市

 東日本大震災の沿岸被災地で、復興の来し方行く末を問う論戦は不発に終わった。18日告示された県議選は津波で大規模被災した3選挙区で無投票となった。暮らしとなりわいの将来は。東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働の是非は。被災者は選択の1票を投じないまま、復興のあすの白紙委任を余儀なくされた。
 石巻・牡鹿(定数5)、塩釜(2)、東松島(1)各選挙区は現職と新人計8人が早々と当選を決めた。
 「県議を選ぶことができず、非常に残念だ」
 東松島市野蒜の無職坂本雅信さん(70)は、復興施策への意思表示ができない結果に落胆する。自宅が津波被害を受けて約800万円かけて修繕した。「被災地は過疎化が進んでいる。在宅被災者の支援にもっと力を入れてほしい」といら立ちを募らせた。
 「地域の将来を担う若い人たちの投票機会が奪われたのは残念だ」。石巻市で子ども支援のNPOに携わる同市の長沼利枝さん(62)は、18歳選挙権導入後初の県議選で最大被災地の若者の投票機会が失われたことを惜しんだ。
 同市の無職岩渕なつ子さん(88)は「選挙は候補者が有権者の生の声を街頭で聞ける機会のはずだ。私たちの声を聞いてほしかった」と嘆いた。
 壊滅的な被害を受けた水産業の復興のありようは、投票時の判断材料になるはずだった。
 「石巻の復興はこれで良かったのだろうか」。同市で水産加工業に携わる男性(75)は震災からの日々を振り返り、「選挙で各候補が切磋琢磨(せっさたくま)すれば議員の質の向上にもつながるはず。今は自分で頑張るしかない」と力を込めた。
 塩釜市魚市場の卸売機関の一つ、塩釜魚市場の志賀直哉社長(72)は「中小零細企業はきつい。『水産のまち』の火を消さないため、県とのパイプ役である県議の役割は大きい。無投票だけにこれからが大事だ」と強調した。
 女川原発再稼働を巡り、県議会は次の任期中に判断を迫られる可能性が高い。
 石巻市で水産加工会社を営む60代男性は「事故が起これば直接的な被害を受ける。責任の所在が曖昧な状態で再稼働に踏み切るべきではない」と意見する。同市の60代女性は「原発は次世代に与える影響が大きい。原発が語られる機会がなくなってしまった」と憤りを隠さなかった。


2019年10月19日土曜日


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