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「心に届く放送を」本宮の地域FM奮闘 避難呼び掛けや生活情報提供

ラジオの放送に臨むときわさん=21日、本宮市

 台風19号で浸水被害が広がった福島県本宮市で、地元のコミュニティーFM「モットコム」(77.7メガヘルツ)が存在感を発揮している。台風襲来時は住民に避難を呼び掛け、市などが発表する生活再建情報などを提供。行政がカバーできない細やかな情報発信にも力を入れている。

◆人命救いたい

 モットコムは、同市のまちづくり会社「モットコムもとみや」が2006年に放送を開始。JR本宮駅前の複合施設1階にスタジオがあり、常駐スタッフ3人とボランティアパーソナリティー約100人が地域密着の情報を届ける。
 かねて水害に悩まされてきた地域でもあり、今回も初動は早かった。
 12日昼ごろから臨時編成を組み、市の防災無線が伝える情報と併せて刻一刻と変化する阿武隈川の状況を放送。「水位は7.35メートルを超えました」「(建物上階に逃げる)垂直避難してください」などと伝えた。
 「東日本大震災の経験を踏まえて防災には力を入れていた。人命を救いたかった」と同社の伊藤芳雄取締役は話す。水位が上昇した阿武隈川は13日午前1時ごろに氾濫。モットコムのある施設は難を逃れたが、濁流が市街地に流れ込んだ。

◆音楽で励ます

 水没した街で、モットコムは音楽を流し続けた。ZARDの「負けないで」やSMAPの「世界に一つだけの花」など元気が出る100曲を選曲。スタッフの松本えりかさん(29)は放送で救助を待つ住民に「必ず来るから気持ちを強く持って」と語り掛けた。
 水が引いた14日からは被災者向け情報を届ける。道路の通行止めやスーパーの開店、罹災(りさい)証明書発行など生活再建に欠かせない情報を伝えている。
 「市内で7人が亡くなった。無力感はある」。伊藤さんは人命を救えなかったことを悔やみながらも、地域FMにメディアとしての可能性を感じる。
 「店舗の開店情報といった営利に絡む情報を行政は発信できないが、FMならできる。市唯一のメディアとして行政を補完するきめ細かな情報を届けたい」
 21日午前、スタジオではパーソナリティーのときわ梨花さん(26)がボランティアの受け入れ情報などを優しい口調で伝えていた。
 ときわさんは「市内には復旧に携わる人もいれば日常生活を送る人もいる。いろいろな人の心に届く放送をしたい」と話した。(神田一道)


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2019年10月22日火曜日


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