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石巻の住宅浸水1万棟 震災で地盤沈下し排水困難に

石巻市の中心市街地を走る中里バイパス。台風19号の大雨で冠水した=13日午前7時ごろ

 台風19号の大雨で、石巻市は住宅の浸水被害が約1万棟(床上321棟、床下9216棟)に上り、被災した岩手、宮城、福島3県で最も多かった。東日本大震災に伴う地盤沈下で市街地の自然排水が困難になったことに加え、道路のかさ上げに伴い近接地がくぼ地になるエリアが増えたことが要因。震災後、浸水被害や避難情報は頻発しており、終わらない被災に住民は徒労感を募らせている。

 「床上浸水は3回目。家を直しても、また台風が来たら被害に遭う」
 海に面する同市塩富町の無職男性(78)は疲れた表情でこぼした。木造平屋の床上20センチまで泥水が上がった。震災時は津波が床上70センチまで押し寄せ、全壊。約500万円かけ修繕したものの、震災から半年後の台風15号でも床上浸水した。
 自宅周辺は85センチ地盤沈下した。床下浸水は常態化し「1メートルかさ上げしようと見積もりを取ったら450万円だった。年金暮らしには払えない」と肩を落とす。
 塩富町の雨水は近くの堀を通じて石巻湾に流れていた。地盤沈下で満潮時に海水が逆流するようになり、市は堀をせき止め、排水ポンプを備えた調整池を整備。今回は10基が稼働したが、能力の限界を超えた。
 津波対策でかさ上げされた道路も地形を変えた。
 石巻市に隣接する宮城県女川町浦宿浜の無職勝又義郎さん(71)宅は今回、床上20センチまで浸水し、町営住宅に身を寄せる。「震災の時は床下浸水だった。ここまで被害が出るとは思わなかった。家を壊すかどうか迷っている」と嘆く。
 勝又さん宅はかさ上げされた国道398号に面している。工事後、大雨の際に流れ込んだ水がたまるようになったという。
 同じ398号沿いに住む石巻市流留の無職女性(83)宅も木造平屋が床上浸水した。周辺の地盤は60センチ以上沈下。かさ上げ道路と敷地の高低差は30センチほどある。震災後の床上・床下浸水は計4回。女性は「チリ地震津波でも浸水しなかった。かさ上げした分、水が入ってくる。雨が降ると聞くと心配だ」と話す。
 震災後、石巻市や周辺の排水事情は一変した。津波が床上1.7メートルまで上がり、1000万円近くかけて修繕した自宅が被災した同市不動町の主婦(70)は「雨が降る度に浸水を心配しながら暮らすのはもうたくさんだ」と訴えた。
(氏家清志、樋渡慎弥、関根梢)

◎仮設排水場、対応できず

 石巻市内は震災の地殻変動で45〜120センチの地盤沈下が発生した。中心市街地を含む全域で雨水の自然流下が困難になり、排水能力は大幅にダウンした。
 震災後の8年7カ月で津波警報を除く避難情報(指示・勧告・準備)は14回発令された。震災を受け仙台管区気象台の警報・注意報発表基準が引き下げられたこともあり、震災前の9年間(3回)を大幅に上回る。
 市内には仮設排水場が32カ所あるが、今回の大雨には対応し切れなかった。市は現在、2014年度に策定した雨水排水基本計画に基づき、排水ポンプ場11カ所の新設を進める。
 完成予定は20年度。市下水道管理課は「排水ポンプ場が完成すれば、今回の台風規模の大雨にも対応できる」と説明する。


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2019年10月25日金曜日


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