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長引く避難、体調懸念 水分補給、手洗いを 医療関係者が注意呼び掛け

避難者が共同生活を送る小斎まちづくりセンター。着の身着のままで避難した女性も多い=25日午後5時ごろ、宮城県丸森町

 台風19号による避難所生活が長引き、被災者の健康被害への懸念が高まっている。東北では25日現在、岩手、宮城、福島3県で2193人が体育館などに身を寄せており、不自由な集団生活で体調不良を訴えるケースもある。東日本大震災でも体調悪化や災害関連死が問題になっており、医療関係者は図のような注意点を呼び掛ける。避難生活特有の疾患予防法をまとめた。
(報道部・菊池春子、佐藤素子)

■エコノミー症候群 

 宮城県丸森町の避難所では、エコノミークラス症候群の疑いがある被災者が複数確認されている。トイレの環境が悪く、水分補給を控えたためとみられる。
 加えて避難所では運動の機会が減り、心臓血管系の疾患リスクが高まる。エコノミー症候群は脚にできる血栓が血液に乗って肺の血管を詰まらせ、呼吸困難や突然死を招く。
 日本循環器学会の災害対策委員長を務める下川宏明東北大教授(循環器内科)は「予防には睡眠と運動が重要。血栓ができないよう、できるだけ水分を取ってほしい」と呼び掛ける。

■感染症予防 

 インフルエンザなどの感染予防も重要だ。東北医科薬科大の賀来満夫特任教授(感染症学)は「世帯間で1〜2メートル以上の距離を確保するのが理想。難しければ段ボールなどで高さ1メートル以上の仕切りを設けてほしい」と助言する。
 震災では発生1週間後から高齢者の肺炎が多発した。「避難疲れで子どもやお年寄りは特に抵抗力が下がる。周囲の目配りも大切だ」と語る。

■メンタルケア 

 精神科医でみやぎ心のケアセンターの福地成・副センター長は「多くの人が被災直後で気分が高揚している段階。避難所生活が長引くほど、取り残された感覚や脱力感が生じかねない」と指摘する。
 「気持ちを落ち着かせる工夫が大切。意識して深呼吸するだけでも違う」と福地氏。「復旧は長期戦。無理せず、そこそこの頑張りでいい、という気構えも大事だ」と述べた。
 内閣府は2016年4月、女性への配慮やトイレの確保などを含めたガイドラインを策定した。
 医療・法律関係者らで構成する「避難所・避難生活学会」理事で、災害関連死に詳しい岡本正弁護士(第一東京弁護士会)は「今回被災しなかった自治体もガイドラインや先例を学ぶことが不可欠。ノウハウを共有し、準備や備蓄を進める必要がある」と指摘する。

◎下着、服、化粧品、鏡、くし… 女性向け用品足りず プライバシー確保も課題

 避難所暮らしが長引くにつれ、女性たちのストレスが高まっている。着の身着のままで避難した女性が多く、下着や衣料品、化粧品、クリーム、鏡、くしなど足りないものばかり。プライバシーの確保も課題だ。
 80人近くが避難する宮城県大郷町の「フラップ大郷21」。大手衣料品メーカーが22日、フリースや下着、靴下などを差し入れた。女性用の下着コーナーには人だかりができ、パンツやカップ付きインナーが瞬く間に姿を消した。
 「衣料品配布は1種類につき1人1点」が避難所のルールだが、50代主婦は「下着は1枚では足りない。女性用はサイズが細かく分かれていて、すぐになくなってしまう」とこぼす。
 避難所は本来スポーツ施設で男女別の更衣室やシャワールーム、洗濯機もある。ただ、寝泊まりする場所は高さ90センチの段ボールで仕切られただけ。30代主婦は「上から丸見え。常に視線を感じ、気が休まる暇がない」と困惑する。
 宮城県丸森町の小斎まちづくりセンターには43人が避難する。大家族や高齢者には個室が割り当てられたが、男女24人が集会室で共同生活している。地元の顔見知りが多く、「顔が見えない方が寂しい」と間仕切りはない。
 家族3人で避難する主婦戸村まさ子さん(61)は「断水が続き、洗濯もなかなかできない。新しい下着がもっとあれば」と話す。
 自宅が1メートル以上床上浸水したアルバイト星光希さん(24)の願いは、プライベートな時間と空間だ。「いびきで眠れない夜もある。家の片付けも常に誰かと一緒。1人の時間が欲しい」。避難所に更衣室がなく、風呂で着替えている。
 「ドライヤーや爪切り、くしなど欲しいものを上げればきりがない」と話すのは会社員星光枝さん(59)。トイレの鏡を交代で使っているといい、「個人用の鏡があればうれしい」と女性避難者の声を代弁した。
(三浦夏子、佐藤駿伍)


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2019年10月26日土曜日


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