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「息子に障害」避難ためらう 宮城・丸森の自宅に土砂流入

土砂が流れ込んだ子ども部屋を確認する佐久間さん=28日、宮城県丸森町

 台風19号の直撃を受けた12日、宮城県丸森町の販売員佐久間明美さん(54)は「障害のある息子を避難所に連れて行けない」と自宅にとどまり、土砂災害に遭った。緊急時に「周囲に迷惑が掛かる」とためらう保護者。台風被災地でも、ハンディのある人々の避難の難しさが浮き彫りになった。
 天井と壁の隙間から青空が広がる。土砂をかき出す重機も見える。「何が正解だったのか」。佐久間さんが土砂でいっぱいになった1階の長女(21)の部屋でつぶやいた。
 12日夜、両親と長女、中学3年の長男(15)と自宅にいた。雨音が強まる。テレビのアナウンサーが「命を守る行動を」と繰り返す。そのたびに「無理」と思った。自閉症の長男は自室から出るのを拒み、長女は手足が不自由。2階への避難もできない。
 午後7時ごろ、「ドン」と自宅が揺れた。裏山側にある長女の部屋の窓が土砂で開かなくなった。命の危険を感じ、長女と母(79)を町役場に避難させた。長男は人が多い避難所に行けばパニックになる。佐久間さんは父(80)と長男の3人で自宅にとどまった。
 電灯が点滅する。午後11時ごろ、2度目の衝撃音が響く。長女の部屋に大量の土砂がなだれ込み、廊下側に水が漏れ出した。家全体に広がらないよう尿取りパットを隙間に押し込んだ。
 幸い長男は薬を飲み、眠っていた。「早く朝になって。これ以上、崩れないで」。祈るしかなかった。
 水が引いた15日、町役場に長女と母を迎えに行った。親戚宅に身を寄せたが長居はできない。子どもたちの生活を考えると壁1枚を隔てた賃貸住宅は避けたい。玄関先に車を横付けできる一軒家を探した。
 隣の角田市で見つけた中古物件は修理が必要で、自宅と親戚宅を行き来している。悩みは断水だ。自閉症は生活のリズムを崩さないのが鉄則。泥が混じる井戸水を風呂に入れて沸かし、長男を入浴させている。自衛隊が設置した風呂は付き添いができず、諦めた。
 佐久間さんは「命を落とさなかったのは運が良かっただけ。障害者らの避難の問題に向き合い、同じような境遇に陥る人が再び出ないでほしい」と願う。
(桐生薫子)


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2019年10月30日水曜日


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