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豪雨と地形が悲劇招く 宮城・丸森に被害集中、11人犠牲

住宅と男女4人をのみ込んだ土石流の発生現場=15日午後1時21分、宮城県丸森町子安

 台風19号は宮城県丸森町で大規模な河川氾濫と土砂災害を引き起こし、死者10人、行方不明者1人の計11人が犠牲となった。県内の犠牲者21人(死者19人、行方不明者2人)の半数以上を、人口が県全体の0.6%、面積3.8%の丸森町が占めた。なぜ、これほどの人的被害が小さな町に集中したのか−。桁外れの豪雨と地形が要因として浮かび上がった。(報道部・東野滋、鈴木拓也)

■橋に流木

 台風19号は海面の水温が高い海域を進み、大量の水蒸気が供給されて巨大な雨雲を形成した。同町筆甫の12時間降水量は517.5ミリを観測。年平均降水量の35.5%に相当する。
 気象庁によると、湿った空気が台風の東風で阿武隈山地にぶつかって上昇し、雨雲が発達する「地形性降雨」も重なった。
 町では阿武隈川(全長239キロ)の堤防決壊こそ免れたものの、支流の内川や新川、五福谷川の破堤は18カ所に上った。2018年の西日本豪雨で51人が死亡した岡山県倉敷市真備町と同様、川の合流点で水位が急上昇し、流れが滞り増水したとみられる。
 三つの支流の上流にある山間部では土砂崩れが100カ所以上発生。中下流域に運ばれた大量の土砂が川底に堆積したほか、無数の流木が橋に掛かって川をせき止め、あふれ出した濁流が地域を襲った。16年の台風10号で被災した岩手県岩泉町でも確認された現象だ。

■内水氾濫

 町中心部では市街地と山に降り注いだ雨水を排水し切れず、水路などからあふれる「内水氾濫」も起きた。浸水状況は町のハザードマップの想定浸水域とほぼ重なる。
 ただ、マップは阿武隈川の氾濫を前提としている。現地調査した東北大災害科学国際研究所の柴山明寛准教授(地震工学)は「それだけ内水氾濫の浸水が膨大だった」と驚く。
 福島県内の阿武隈川上流では堤防決壊と氾濫が多発した。下流の水量が減り、丸森町で決壊を免れた可能性がある。決壊していれば浸水量は激増し、柴山准教授は「2階に逃げた人も危なかった」と指摘する。
 山間部で多発した土砂災害も被害を拡大させた。京大防災研究所の竹林洋史准教授(河川工学)は、住宅ごと男女4人を土石流が襲った子安地区や隣接する廻倉(まわりぐら)地区の地質などを調査し「元々もろかった地盤が、大雨でさらに緩んだのが原因」と分析する。
 子安地区の土石流をシミュレーションした結果、秒速は約10メートル(速報値)と推定。約400メートル先の住宅まで約40秒で到達する計算で、逃げる時間はなかった。

■「紙一重」

 地元では、廻倉地区で02年に起きた大規模な山火事と土砂災害の関連をいぶかる声が多い。県は焼失した約160ヘクタールのうち52ヘクタールで植林するなどしたが、まだ根の張りが不十分だったのではないかとの疑念からだ。
 東北大災害研の森口周二准教授(地盤工学)は「西日本豪雨や台風10号豪雨でも山火事と関係なく土砂崩れが起きた。根が土砂流出を防ぐ効果はあるが、これだけの雨量では耐えられない」と強調する。
 子安、廻倉両地区とも県の土砂災害危険箇所に指定されていなかった。森口准教授は「危険箇所の有無を無意味にするほどの恐ろしい雨だった。被害がなかった地域も紙一重。山際に住む人は土砂災害のリスクを認識し、早めに避難してほしい」と訴える。


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2019年10月31日木曜日


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