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「農福連携」広がる 障害者派遣の実績3年で10倍 コーディネーター増に課題

リンゴの葉摘み作業に取り組む飯村さん(中央)=10月10日、福島市飯坂町の斎藤果樹園

 障害者を農業の現場に派遣する「農福連携」の取り組みが福島県内で広がっている。農家の人手不足解消と障害者の就労支援を同時に図る施策で、派遣実績は3年で10倍になった。障害者を送り出す事業所と受け入れ側の農家の調整が重要で、コーディネーターの増員が今後の課題だ。
 福島市飯坂町の斎藤果樹園で10月10日、リンゴの色付きを妨げる余分な葉を摘む作業に3人の男性が当たっていた。精神障害や発達障害がある人が主に軽作業を通じて就労訓練を受ける就労継続支援B型事業所「Works−SCS笹谷」(同市)の通所者だ。
 通所者の一人、飯村辰徳さん(35)は「初めての作業でも丁寧に教えてもらえる。楽しいですよ」と笑顔を見せる。果樹園の従業員と冗談を言い合うなど、リラックスした様子で2時間の作業をこなした。
 県は2016年度に農福連携事業を開始。事業所と農家の仲介業務などを県授産事業振興会に委託している。派遣実績は初年度が75人、17年度201人、18年度701人。19年度は8月末で853人に達した。
 斎藤果樹園は事業2年目から障害者を受け入れている。斎藤康之社長は「初めは手探りだったが、剪定(せんてい)後の枝拾いに始まり葉や花の摘み取り、出荷用の箱の組み立てなど任せられる作業がどんどん増えている。必要な時に働き手が来てくれて非常に助かる」と話す。
 農福連携の狙いの一つはB型事業所に通う障害者が受け取る工賃の底上げだ。
 17年度の県平均は全国平均より約1000円低い月額1万4602円。作業内容は障害の程度に応じて決まるため工賃設定が全て不合理とは言えないが、障害者の能力が低く見積もられる事例もあるとみられる。
 SCS笹谷の場合、以前も近隣農家を手伝うことがあったが、単発の作業で工賃が不安定だった。斎藤果樹園から定期的に作業を請け負うようになり、18年度の全通所者の平均工賃は月額1万円を超えた。県平均より低いものの、前年度の2倍になったという。
 関係者は事業所と農家をつなぐコーディネーターの重要性を強調する。作業内容の難易度と障害の種類や程度を踏まえて両者をマッチングさせたり、双方が納得する工賃設定に向けて協議したりする役割を担う。
 授産事業振興会が置くコーディネーターは渡部栄昭さん(54)ただ一人。「派遣実績が増え、エリアも広がっている。農福連携は信頼関係が重要で、人員を増やさないときめ細かな対応が難しくなる」と語る。


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2019年11月03日日曜日


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