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国土強靱化対策、危険認識も工事間に合わず 宮城・吉田川と阿武隈川流域、豪雨頻発で被害拡大

吉田川(左)の堤防が決壊した宮城県大郷町の粕川地区=10月13日

 河川堤防の決壊や広範囲の浸水などの台風19号被害は、国が2018年から進めている「国土強靱(きょうじん)化のための3か年緊急対策」の真っただ中で発生した。宮城県内の流域で甚大な被害が出た吉田川と阿武隈川も対象だったが、対策を講じる前に被害が拡大した。頻発する豪雨災害にインフラ整備が追い付いていない現状が浮かび上がる。(東京支社・山形聡子)

 宮城県内の吉田川と阿武隈川の浸水域と緊急対策の該当箇所は図の通り。吉田川では特に工事が予定されていた区域と被害が発生した地域はほぼ重なる。
 3か年の緊急対策で、過去に氾濫や堤防の決壊が発生したことを踏まえ、県内の吉田川と阿武隈川では計4カ所が対象とされた。
 緊急対策で実施する河川改修は二つある。「河道掘削」は川底や河川敷に堆積した土砂を撤去し流れる水の量を増やし氾濫を防ぐ。もう一つは護岸整備や堤防のかさ上げなどで決壊を防止する「堤防強化」だ。
 吉田川は大和町から松島町までの区域で河道掘削、松島町で堤防強化が予定される。阿武隈川では丸森町から角田市の地域で堤防強化と、丸森町で河道掘削が計画されている。
 危険箇所として認識されながら対策が間に合わなかった背景には、予算の大半が19年度予算で措置されたことが影響している。
 設計や発注の手続きに必要な期間を考慮すると、実質的なスタートは19年度後半。吉田川と阿武隈川の対象箇所も台風襲来時点では、ほとんどが施工業者と契約を結んだばかりだった。
 国土交通省の担当者は「河川改修は渇水期に入る秋以降に着手するのが一般的。宮城県内に限らず、多くの場所で工事に入る前だったのではないか」と説明する。
 結果的には政府与党を挙げて推進する巨大プロジェクトが効果を発揮する前に、猛烈な豪雨に襲われた形になった。自民党は20年度までと定めた緊急対策期間の延長に加え、想定降雨量を引き上げた上で堤防かさ上げや川幅を広げる工事の実施を政府に提言している。
 赤羽一嘉国交相は記者会見で「過去に繰り返し水害が発生した地域が再び被災した」と現状の治水計画の限界に言及。「気候変動の影響による降雨量の増加などを考慮し、あらゆる対策を総動員し政策を転換する必要がある」と話す。

[国土強靱化のための3か年緊急対策]2018年7月の西日本豪雨などの大規模災害を受け、18年12月に政府が閣議決定した。河川改修のほか迅速な住民避難につなげるためのハザードマップの作成など160項目、総事業費は約7兆円。対策期間は18〜20年度。


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2019年11月04日月曜日


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