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住宅浸水被害、東北3県で支援に差 独自策は岩手のみ、対象拡大求める声切実

 台風19号豪雨で大きな被害を受けた東北の3県で、被災者生活再建支援法の対象から外れる住宅の浸水被害への対応が分かれている。岩手県は独自の支援策を検討する一方、宮城、福島両県は新たな支援を講じない方針。被災自治体からは隙間を埋める支援を求める声が上がる。
(桐生薫子)

 いち早く支援策の検討を打ち出したのは、岩手県の達増拓也知事だ。岩泉町などが台風10号豪雨で水害に見舞われた2016年、支援法から外れた半壊世帯に最大20万円、床上浸水世帯に最大5万円を支給。実績は1667世帯、約2億9700万円に上った。
 今回も同様の枠組みを想定する。県地域福祉課は「同じ被害でも市町村によって支援に格差が生じる可能性がある。(県の独自支援は)広域行政として果たすべき役割だ」と説明した。
 「優先順位に差がある。それは首長の考え方の違いで問題ないのではないか」。宮城県の村井嘉浩知事は11日にあった定例記者会見で、個人資産に対する支援に消極さをにじませ「その分の財源は他に回す」と強調した。
 現行の住宅再建支援制度に関して「十分ではない」との認識も示し、「全国一律にするべきではないか。全国知事会も政府に対象拡大を求めている」と持論を展開。被災世帯数が多いことも挙げ、理解を求めた。
 福島県は支援法が適用されない災害に限り最大300万円支給する恒久制度があるが、床上浸水は想定していない。内堀雅雄知事は5日の記者会見で対象拡充は難しいとの見方を示し、「国に制度の拡充を求めていく」と述べた。
 被災市町村からは切実な声が上がる。宮城県丸森町の保科郷雄町長は12日の記者会見で訴えた。「水害は深刻で、1メートルの壁で判断すべきではない。はねつけられるかもしれないが、国や県に支援を求め続ける」

[被災者生活再建支援法]1市町村で10世帯以上が全壊すると適用される。支援金は「大規模半壊」以上が対象で、浸水1メートル未満の床上浸水は原則支給されない。当初は年収や使途に縛りがあるなど使い勝手が悪く、多くの被災自治体が独自策を講じる流れの中で2度の改正に至った。2011年に見直しの議論を予定していたが、東日本大震災の発生で棚上げされている。

◎全国で制度恒久化の動き

 過去に甚大な水害に見舞われた地域では、都道府県レベルの独自支援が広がっている。制度の恒久化も進んでおり、住民の現地再建を資金面で後押しすることで、被災地からの人口流出を防ぐ狙いがある。
 全国の恒久制度の主な例は表の通り。全国に先駆けて構築したのは2004年に台風被害を受けた岐阜県だ。支援法が適用される災害に限り、床上浸水に30万円を支給する。今年4月には知事の裁量で制度を活用できるよう、発動要件を緩和した。
 県防災課は「山間部は住家が少なく、支援法が適用されにくい。集中豪雨は増えており、地域間格差の是正を急いだ」と強調する。
 単独の災害で支援策を講じるケースも多い。昨年の西日本豪雨では愛媛県が半壊に37万5000円、床上浸水に22万5000円を支給した。県防災危機管理課は「コミュニティー維持には住民の現地再建が欠かせなかった」と語る。
 徳島県は14年の台風被害の後、床上浸水に最大75万円を補助し、生活用品や家電の購入も認めた。県とくしまゼロ作戦課は「賃貸住宅の被災者も幅広く救済しようと考えた」と説明する。
 内閣府のまとめでは、18年4月時点で少なくとも33道府県が独自の住宅支援制度を実施している。
 関西学院大災害復興制度研究所の野呂雅之主任研究員は「都道府県が少額でも独自に支援制度を作ることは、行政が被災者を見捨てていないとのメッセージになる」と指摘する。


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2019年11月18日月曜日


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