広域のニュース

宮城、福島の決壊河川6割で浸水想定なし 「中小」カバーできず

台風19号で氾濫した味明川。川底は土砂や草木で覆われている=10月30日、宮城県大郷町

 台風19号豪雨で堤防が決壊した宮城、福島両県が管理する41河川のうち、約6割に当たる23河川の堤防決壊箇所周辺に浸水想定区域が設定されていなかったことが分かった。洪水ハザードマップを作成する際の基本情報となるが、中小河川までカバーできていない課題が改めて浮き彫りとなった。
(報道部・高橋鉄男)

 浸水想定区域は、河川が氾濫した際に水に漬かるエリアと水深を表示。水防法に基づき、国や都道府県が対象河川を指定する。県のホームページや市町村が作る洪水ハザードマップで確認できる。
 宮城県河川課によると、県管理の18河川36カ所の決壊箇所のうち、名蓋川、照越川など16河川34カ所で浸水想定区域が未設定だった。甚大な被害が出た丸森町では、阿武隈川の浸水区域の想定はあったが、堤防が決壊した支流の新川、内川、五福谷川はなかった。
 宮城、福島両県の堤防決壊箇所を見ると、大きな河川の支流で、川幅が狭い小規模な河川の堤防が決壊する傾向がみられた。
 福島県では23河川49カ所で堤防が決壊し、うち藤野川、三滝川など7河川7カ所の決壊箇所周辺で浸水想定区域が未設定だった。
 県河川整備課は「数十年に1度の洪水想定は中小河川も組み入れる努力をしてきた」と説明。ただ、2015年の水防法改正で「千年に1度」に引き上げられた災害規模の想定は19河川39カ所で未設定だった。作成に時間がかかることなどが理由という。
 台風19号の被害を受け、赤羽一嘉国土交通相は浸水想定区域の設定対象について小規模河川への拡大を検討する考えを示している。

◎支流の水位急上昇氾濫次々「過去の経験縛られた」

 台風19号豪雨では、浸水想定区域が未設定の中小河川で氾濫や堤防の決壊が相次いだ。流域の住民は過去の水害経験などしか判断材料を持ち合わせておらず、水位計設置といった対策にも限界がある。
 同県丸森町の金山地区では10月12日夜、阿武隈川支流の雉子尾(きじお)川があふれ、広い範囲で浸水した。越水地点のそばに指定避難所の金山まちづくりセンターがあり、20人近くが避難した。約1メートル床上浸水し、全員が2階に上って難を逃れた。
 近くで排水作業中だった消防分団長の松崎篤さん(63)によると、川の水位が急上昇したのは同日午後7時ごろから。上流側からも濁流が押し寄せ、松崎さんは膝まで水に漬かりながら「2階に上がれー」と叫び続けた。
 松崎さんは「(1986年の)8.5豪雨ではひどくても床下浸水だった。雉子尾川は浸水想定区域の設定がなく、過去の水害経験に縛られた」と振り返る。
 吉田川の堤防が決壊し、大規模な浸水被害に遭った同県大郷町でも支流の味明(みあけ)川が13日未明に氾濫した。
 味明川流域に住む千坂幸寿さん(66)は1階の畳やテレビをブロックに乗せて備えたが、床上約1.3メートルの浸水で使えなくなった。町は県に対し、味明川の浸水想定区域を設定するよう求め、2021年春には示される予定だった。
 千坂さんは「川底に大量の泥や草木がたまり、豪雨を受け止めきれない。中小河川にもっと目を向けてほしい」と訴える。
 事前の対策として、宮城県は水位計の設置箇所を増やしているが、台風19号で決壊した五福谷川など7河川は未設置だった。15年9月の関東・東北豪雨の際に、大崎市の堤防が決壊した渋井川では水位計が故障し、観測データが十分に得られなかった。
 担当者は「中小河川は水かさが急激に増えるため、水位計を見てからでは避難が遅れる可能性がある」と対応の難しさを説明する。
 東北大大学院の風間聡教授(水工学)は「予算も人口も先細る地方では、中小河川の隅々にまで対策を講じるには時間がかかる。高齢者への避難支援も含め、住民同士で対策を考えるところから始めないといけない」と指摘する。


関連ページ: 広域 社会

2019年11月09日土曜日


先頭に戻る