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鮎川の全盛期懐かしむ 映画「鯨と斗う男」60年ぶりに現地で公開

上映前に作品の説明をする大島さん(右奥)

 国内屈指の捕鯨基地として栄えた頃の宮城県石巻市鮎川で撮影された映画「鯨と斗(たたか)う男」が約60年ぶりに現地で上映された。ロケ地一帯は東日本大震災の津波で壊滅した。往事の街並みや暮らし、捕鯨の活況を伝える映像に、鑑賞した住民は全盛期の古里の記憶をよみがえらせた。
 高倉健さんの主演2作目で1957年に公開された。全編を鮎川と石巻市中心部で撮影し、高倉さんが捕鯨船の砲手役を演じた。大海原で鯨にもりを撃ち込む場面や捕獲した鯨の解体作業、大漁に沸く地域、船員でにぎわう酒場の様子が随所に盛り込まれている。
 上映は11月30日、「ホエールタウンおしか」であり、住民や地元出身者ら約150人が訪れた。映画にはエキストラとして当時の住民が多数出演しており、見物客が人垣を作る「鯨まつり」のシーンではスクリーンを指さしたり確認し合ったりする姿が見られた。
 ロケ現場となった大洋漁業(現マルハニチロ)の社員だった鹿井文子さん(83)は職場で働く自分の姿が映った。「鯨の尾の辺りを切る作業をしていた。あの場所も津波でなくなった。鮎川が一番景気がいい時代で、本当にいい町だった」と懐かしんだ。
 仙台市青葉区から訪れた亀山七蔵さん(86)は映画と同時代に鮎川で捕鯨船に乗り、通信士をしていた。「捕鯨の場面は当時の現場そのものだった。(鯨を解体する)解剖場など、どの場面も覚えている。自分の青春だった」と話した。
 上映会は「石巻学プロジェクト」が企画。代表を務めるノンフィクション作家で、石巻市出身の大島幹雄さん(66)=横浜市=が全国に寄付を呼び掛けて資金を集め、東映の了承を得て実現させた。今年8月に石巻市内で先行上映した。
 大島さんは「映画がやっと鮎川に帰ってきた。使命を果たせ、ほっとしている。地元を離れた人が鮎川に来るきっかけになればうれしい」と感慨を込めた。


2019年12月04日水曜日


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