福島のニュース

台風で被災「キネマの天地」復活を 83歳の劇場主、修復に奮闘

上映会の再開を目指し、レトロな映写機の手入れをする田村さん=本宮市本宮中條

 台風19号による河川の氾濫で浸水した福島県本宮市中心部の老舗映画館「本宮映画劇場」が、100年余りに及ぶ歴史で初めての浸水被害に見舞われた。貴重なフィルムが泥をかぶるなどの被害を受けたが、83歳の劇場主は「キネマの天地」の復活に情熱を燃やす。

 JR本宮駅から歩いて5分。中心市街地の路地裏に、レトロな雰囲気を漂わせる木造3階のピンクの建物が姿を見せる。
 劇場のルーツは1914年創業の本宮座にさかのぼる。テレビの普及もあって63年に休館。劇場主の田村修司さんは自動車セールスマンに転職したが、建物は売却せずに守り続けた。
 休日に57年製のカーボン式映写機に油を差し、フィルムが劣化しないよう空気に触れさせる作業を重ねた。10年ほど前から年2、3回、無料の上映会を手作りで開催。昔懐かしいたたずまいが評判を呼び、多くの映画ファンが見学に訪れる人気スポットだった。
 10月12日、田村さんは映画館近くの自宅にいた。台風の豪雨で近くの阿武隈川はどんどん水かさを増し、13日未明に氾濫。自宅1階にも水が流れ、就寝中だった田村さんは慌てて2階に上って難を逃れた。
 「この辺は標高が高く、30年ほど前の大洪水でも浸水しなかった。完全に油断していた」。一夜明けて訪れた映画館は客席の一部に水が残り、ロビーは泥だらけに。自宅の床に置いていた映画の予告編などのフィルム約200本も泥水をかぶった。絶望で目の前が真っ暗になった。
 救いになったのは多くの劇場ファンだった。
 台風直後に劇場に駆け付け、泥だらけのロビーの清掃や洗浄を手伝ってくれた。フィルムをつなぎ合わせる道具のスプライサーを送ってくれた映画館もあった。「フィルム映写機があるのは全国でも少ない。灯を守ってほしいという熱い思いを託されたのかな」。
 10月下旬に開催予定だった上映会は中止を余儀なくされたが、「被災フィルムを修復し、来春には必ず手伝ってくれた人を招いて開きたい」と意気込む。
 「映画には人を楽しませる力がある。あと10年は上映を続け、世界最高齢の映写技師としてギネス認定されるのが夢なんだ」。名作「ニュー・シネマ・パラダイス」の老技師のような熱いまなざしで、長く連れ添った映写機を見つめた。
(神田一道)


関連ページ: 福島 社会

2019年11月27日水曜日


先頭に戻る