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台風で「仮設」暮らしに逆戻り 福島の原発避難者またため息

避難先の住宅が浸水し、再び仮設住宅に入居した守岡さん=11月21日、郡山市南1丁目
再建したばかりの住宅が浸水被害を受けた広畑さん=11月19日、いわき市平中平窪

 広範囲に甚大な被害をもたらした台風19号は、東京電力福島第1原発事故で古里を追われた避難者の暮らしを再び直撃した。ようやく腰を落ち着けられた新居は泥にまみれ、冬を迎えても片付けや修理が終わらない。かつての仮設住宅暮らしに逆戻りし、窮屈な年越しを迎える被災者もいる。
(報道部・吉田尚史)

 ひっそりとした仮設住宅に冷たい風が吹き、風除室がガタガタ音を立てる。長屋造り、二間だけの狭い空間。原発事故で避難した当初の記憶がよみがえる。
 「2度も避難することになるなんて」。福島県富岡町から避難し、郡山市の自宅が浸水被害を受けた無職守岡正子さん(76)は11月中旬、市内のプレハブ仮設住宅に息子と入居した。8年前、富岡町民ら原発避難者向けに整備され、現在はほとんど空室だ。
 5年ほど前、同県大玉村の仮設住宅を出て郡山市に新居を購入した。近くを流れる阿武隈川支流の逢瀬川が氾濫し、水が床上まで達した。「天災だから何ともしようがないよねぇ」と自らに言い聞かせる。
 2階で生活を始めたが、台所がないため弁当を食べる毎日。体が疲れ、富岡町に戻ろうか思案していた時、町から仮設住宅入居の打診があった。台風19号で被災した町民の数世帯がいわき、郡山両市内の仮設住宅に入るという。
 エアコンの調子が悪いため、こたつとヒーターを持ち込んだ。「部屋が狭いのは辛抱しなきゃ。日当たりもいいし、逆に部屋が早く暖まる」。前向きに考えるようにしている。
 リフォームを終え、再び自宅に戻れるのは年を越す見通しだ。「隣近所は空き部屋だけど、富岡の人がいずれ入ると思うんだ」。静かな廊下を見渡しながらつぶやいた。
 全町避難が続く同県双葉町の無職広畑良一さん(68)は、避難先のいわき市の自宅が被災した。新居を構えて3年余り。「ついのすみかと思い、覚悟を決めて建てたのに…」と肩を落とす。
 家の前を流れる夏井川が氾濫し、床上まで浸水。泥をかき出し、拭き掃除などをこつこつするが、1カ月が過ぎても終わりが見えない。床にくっきりと黒い染みが残り、ため息が出る。
 「もうほかに行くところはねえよ」。原発事故で避難先を県内外で5回以上も転々とした。周囲に高い建物もなく、土地柄も古里に似ていたことが気に入り、いわき市郊外に腰を落ち着けた。双葉町の家は動物に荒らされて取り壊した。
 2階で妻と暮らす。寝付きが悪くなり、体重も落ちた。朝起きて1階に降りると泥の臭いが鼻を突き、気分が落ち込む。「原発事故で避難した時を思い出しちまう。家を直しても、また来年、大きな台風が襲ったらどうなるんだろうか」


2019年12月08日日曜日


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