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岩手沿岸の秋サケ大不漁 前年同期の17%、海水温上昇で稚魚減少か

盛漁期を迎えても低迷が続くサケの水揚げ作業=3日、宮古市魚市場

 岩手県沿岸の秋サケ漁が極端な不振にあえいでいる。10日現在の漁獲量は前年度同期比でわずか17.6%。東日本大震災以降の不漁に追い打ちをかける格好となり、漁業関係者の落胆は大きい。採卵、ふ化、稚魚放流、回帰のサイクルで成り立つ増殖事業をも揺るがしかねない異常事態だ。(宮古支局・佐々木貴、釜石支局・中島剛、大船渡支局・坂井直人)

 盛漁期を迎えた本州一のサケのまち宮古。しかし、魚市場の雰囲気は湿りがちだ。
 例年なら1日当たり1万数千本の水揚げを記録する時季が、12月に入っても1000〜8000本台に低迷している。「これほど圧倒的な不漁は記憶にない」と魚市場関係者はため息をつく。
 本年度の岩手の秋サケ漁は10日現在で漁獲量1245トン。魚市場別の漁獲量も前年度同期比で大槌が5.1%、山田が9.8%、釜石が10.7%など軒並み危機的状況が続く。総漁獲量は、最低水準に終わった2017年度の6229トンを下回って終了するのが確定的となった。
 釜石市の水産加工業「平庄」は、県産サケの取り扱いを諦めた。品薄で価格も高く、頼まれた贈答用のみを北海道産で提供しているという。
 前年度に2億5000万円あったサケとイクラの売り上げは本年度、800万円に届くかどうか。近年の不漁傾向を受けて取り扱い魚種の多角化を進めてきており、中村豊専務は「もうサケでもうける時代ではない」と見切りを付けた。
 状況は隣県も似たり寄ったり。前年度同期比(11月末現在)で宮城が26.8%、青森の太平洋側が33.6%(全県で37.2%)にとどまる。東北区水産研究所宮古庁舎(宮古市)は、漁獲の主力となる4歳魚の回帰数が少ない影響とみる。
 稚魚を放流した16年春は三陸沖から北海道東部にかけて海水温が特に高く、北太平洋に向かう途中で大量の稚魚が衰弱死したり、捕食されたりしたとみられる。回帰時期を迎えても沿岸の水温が下がらないことが要因として考えられるという。
 水産研は「成育に適した海域は北上する傾向にある。地球温暖化の影響は否定できない」と指摘する。
 採卵して来春の放流に備える河川での捕獲量も前年度比21.9%と低水準で推移している。急きょ、洋上で確保した分も63.6%。現在の採卵数は計画の3割にとどまる。
 漁協幹部は「他のふ化場から卵を移入する余裕もなく、計画の達成は無理」と言及。「人間の力ではどうにもならない。安定的な捕獲が見通せないのでは、ふ化・放流事業の根幹が揺らぐ」と表情を曇らせた。


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2019年12月13日金曜日


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