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サンマ漁獲量、前年の2〜3割に 遠のく漁場、水揚げ回数減…好転の兆し見えず

 統計が残る中で最低の漁獲量を記録して今年のサンマ漁が終わろうとしている。特に主漁場が極端に沖合へ移動した漁期前半は不振を極め、三陸を中心に主要漁港の水揚げは11月末現在で前年同期の2〜3割にとどまった。資源量の低下や海洋環境の変化が指摘される中、事態が好転する兆しは見えない。
(大船渡支局・坂井直人)

 「各国が漁獲に参入してサンマ資源の維持に悪い影響を与えているのではないか。海域ではマイワシが増え、サンマ分布域が狭められている」
 「2017年以降、サンマが好む冷たい親潮本流が北海道の東沖まで南下しない。漁場の沖合化が一層進んでいる」
 「小型船を中心に漁船が減っていく恐れもある。北海道では原料高による水産加工会社の大型倒産がささやかれている」
 岩手県大船渡市で9日にあったサンマ漁業シンポジウムでは、専門家から深刻な報告が相次いだ。
 全国さんま棒受網漁業協同組合(東京)が6日に発表した11月末現在のサンマ水揚げ量は大船渡5891トン(前年同期比35%)、気仙沼4690トン(28%)、女川3740トン(25%)、宮古890トン(22%)、釜石775トン(29%)、小名浜142トン(21%)だった。
 今年のサンマ漁は、8月の漁期当初から異常続きだった。
 例年なら漁場となるはずのロシア海域で魚群が見当たらず、サンマ船は北太平洋の公海まで出向いての操業を強いられた。漁獲が振るわない上、港と漁場の往復に日数を要し、水揚げの回数が減った。
 「漁場が遠いために小型漁船はほとんど出漁できず、出漁した大型漁船も燃料費がかさんで赤字だったと思われる」(一般社団法人漁業情報サービスセンター)
 10月に入って漁獲量が上向いたものの、11月中旬になると、今度はしけで操業できない日が続いた。

 品薄の影響で魚価は高騰。本州一の水揚げを誇る大船渡市魚市場では、10キロ当たりの平均単価が前年同期比で1.77倍に跳ね上がった。
 大船渡市の水産加工会社「及川冷蔵」の及川広章社長は「これほどサンマを確保できなかった年はなかった。生鮮サンマならともかく、消費者は高い加工品には手を出さない」と嘆く。
 スルメイカ、サケなど他の魚種も不漁が続き、地域経済全体の冷え込みを感じるという。
 シンポジウムでは、産地が一体となって資源の効率的利用や付加価値の向上、流通構造の簡素化に取り組む必要性を指摘。岩手大三陸水産研究センターの研究者は「サンマ産業を持続させるため、それぞれの立場から考えていくことが大切だ」と強調した。

◎マイワシに高まる期待 小型漁船に特別許可

 岩手県沖では主力魚種のサンマやスルメイカの深刻な不漁を受けて11月末、小型漁船(5トン以上20トン未満)によるマイワシの試験操業が始まった。漁業者の要望に県が応じ、最長で来年6月まで特別に漁獲を許可した。
 大船渡市魚市場では連日のように小型サンマ漁船が着岸し、12月20日までの延べ16日間で計2492トンのマイワシを水揚げした。
 1操業当たりの平均水揚げは約20トン。「恵比寿丸」(19トン、乗組員6人)の船主村上健二さん(61)は「救いの神だ。これで何とかしのぎたい」と安堵(あんど)の表情を浮かべる。
 8月に解禁されたサンマ漁は漁場が極端に遠く、操業リスクが悩みの種だった。北海道の釧路港で待機する日々が続き、サンマの水揚げは4回で計40トン程度。一方で船主には人件費や操業経費が変わらずのし掛かる。
 マイワシはサンマより魚価こそ安いものの、村上さんは「漁場が近く、水揚げの回数を増やせる。採算は合う」とみる。
 マイワシは近年、資源量が増加しているとされる。岩手県沿岸では昨年、定置網漁船や巻き網漁船が1万5700トンの水揚げを記録。東日本大震災以前の240トン(2008〜10年の平均)から大幅に増えた。
 こうした状況を踏まえて県は、他の漁法に配慮するルールを付して小型サンマ漁船26隻にマイワシ漁の操業を許可した。
 県水産振興課は「先行する北海道では、大きくて鮮度が保持されたマイワシは価格もいいようだ。原料確保に困っている水産加工業者にとってもプラス材料になってほしい」と期待を寄せる。

サンマ小型漁船によるマイワシの水揚げ=2日、大船渡市魚市場

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2019年12月22日日曜日


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