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それぞれの2020東京[3]ロバート キャンベルさん/花の陰 訪日客と遊ぼう

「東北の思いに触れて」と話すキャンベルさん=東京都立川市の国文学研究資料館

 東京五輪の年が明けた。アスリートの躍動、メダルがもたらすドラマ、海外のファンとの交流。歓声は東北にも響き渡る。期待に胸を躍らせているのは、時代を彩ってきた人たちも同じ。それぞれの「五輪」を大いに語ってもらう。

 東京五輪は日本で暮らす外国出身者にどう映っているのか。テレビや雑誌などさまざまなメディアで活躍する日本文学研究者のロバート キャンベルさんは日本に来て35年。「おもてなし」や「復興」「令和」と話は多岐にわたる。
(聞き手はスポーツ部・岩崎泰之)

 −五輪イヤーです。スポーツしてますか。

 「お酒や音楽のようにスポーツは人を結ぶ。競争の原理はあるが、基本は自己研鑽(けんさん)。近所のジムに通っているけれど、くさくさしたり、閉ざしたりしている人に会ったことがない。スポーツの仲間は私を支えてくれるし、私も支えたいと思う。体を動かしたり、その場で見たりするのはすごく楽しい」

 −海外から大勢の人が五輪を見に来ます。

 「昨年のラグビーのワールドカップ(W杯)はどの会場も外国人が多かった。彼らは日本の物を食べたり人と話したりすることにすごく貪欲。日本で暮らす人たちは彼らが来ることを楽しめばいい。日本のおもてなしは大事だけど、それだけではお互い疲れちゃう」
 「ラグビーW杯でスコットランドから観戦に来た男たちはキルトを着ていた。彼らにとっては自分たちがおもてなしをしているつもり。迎え撃つ方がたじろぐくらいです。日本の人たちは大真面目に粗相がないようにお迎えするのでなく、居酒屋に誘ってみるとか一緒に遊ぶことが大事だと思う」

 −一部競技は東日本大震災の被災地で行われます。

 「東京に暮らしていて、東京五輪の理念の一つである『復興五輪』はよく見えず残念です。ただ、来日する人たちはすごく地方に行きたがる。東北はちょうど良い季節。震災のことや原発事故のことを意識している人は相当いるはず。彼らには東北の魅力や人々のユーモア、この10年間どのようにして自分たちの社会を再建しようとしているのか、東北の人たちの思いに触れてもらいたい」

 −五輪を前に、令和の時代となりました。

 「明治や平成などの元号は為政者の視点を反映したネーミング。令和は万葉集から。春の風に梅の花が散る景色の歌から取っている。質的に今までの元号と違う。1990年代にバブルがはじけ、人々が会社を運命共同体として見るような戦後のビジネスモデルが崩れた。自分の人生をどうつくるのかと考えるようになり、文化的には春の風のような、温かい風が吹いている。これまでの文化から新しい枝葉が伸び、再建されようとしていることと、令和というイメージがシンクロしている」

 −東北を含めた日本の文化をどう見ていますか。

 「種族主義が加速化して社会が分断される世の中で、日本の人々は柔軟性とファクト(事実、現実)を見つめて行動する意欲がある。俳人小林一茶に『花の陰あかの他人はなかりけり』という有名な句がある。花見の場所では身分も性差もなく、しょせんは他人だけど、人々がいろいろなものを持ち寄って、どこかでつながっている。支え合っている。人々が許し合う、しなやかな力は日本の文化の特色。五輪は『花の陰』になってくれるでしょう」

[ロバート・キャンベル]米ニューヨーク市生まれ。1985年に来日し、東大大学院教授などを経て2017年から国文学研究資料館長。東大名誉教授。専門は江戸・明治時代の文学。特に江戸中期から明治の漢文学、芸術、思想を研究する。


2020年01月05日日曜日


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