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見えぬ治水対策、撤退も 被災3ヵ月の郡山中央工業団地 立地企業が市に対策求める

浸水被害を受けた事務所や工場の後片付けに追われる従業員=昨年10月15日、郡山市の郡山中央工業団地

 台風19号で浸水被害が拡大した福島県郡山市の郡山中央工業団地で、被災から3カ月を経ても再開の見通しを立てられない企業が少なくない。昨年末にはいち早く大手の日立製作所が撤退を表明し、他の立地企業も再び繰り返されかねない水害に不安を隠せない。
(郡山支局・岩崎かおり)

 「従業員の安全と顧客への安定供給を考慮して移転を決めた」
 日立製作所は、団地内にある郡山事業所の事業の大半を神奈川県や愛知県に移転する方針だ。同社は1986年の8.5豪雨でも被災。高さ約3メートルの防水壁を設置したが、今回も生産設備などが被害を受けた。
 同じ理由で隣の須賀川市への移転を決めた印刷工場は、工場が約1.5メートル水に漬かり、機械が全滅した。新しい機械がそろうのは4月末といい、現在は印刷を外注して業務を継続する。
 担当者は「水害に備えた具体的な対策が見えない中で近い将来また被害に遭うと想定され、事業を続けるのは困難」と語る。
 次の水害に備え、生産拠点をあらかじめ分散させる動きも出てきた。
 団地に本社を置く幸楽苑ホールディングスは、麺やスープを製造する郡山工場が浸水。244店舗が一時休業を余儀なくされた。
 工場は昨年11月4日に操業を再開できたが、同10月の売上高は前年同月を3割下回った。同社は別の場所への新工場建設を検討中だ。

 立地企業からは治水対策や新たな支援策を求める声が上がる。
 製造業の50代男性は「グループ化補助金ではカバーしきれない。早急に新たな対策を打ち出してもらわないと、また撤退する企業が出てしまう」と懸念する。
 敷地のかさ上げなど、今後の災害に備える設備投資には数億円かかる。だが設備投資はグループ化補助金の対象外。グループ化補助金は中小企業を対象としているため、大企業やみなし大企業も対象にならない。
 国などによる低金利融資制度もあるが、被災企業には新たな負債を抱える決断は難しい。
 別の工場経営者は「誘致する時は一生懸命でも、企業が大変な時に行政は冷たい。市独自の支援策を考えてもらいたい」とこぼす。
 市は9日、団地内に被災企業を支援するサテライトオフィスを開設した。産業政策課などの職員6人を配置。企業訪問で要望や相談などを聞き取り、早期復旧につなげる方針だ。
 中央工業団地会の小川則雄会長は「福島県内の産業をリードする大企業も多い。撤退する企業がこれ以上出ないよう、まずは治水対策をしっかりやってもらい、ここで一緒に頑張ろうと訴えたい」と話した。
 146の企業が加盟する団地会と郡山商工会議所は9日、阿武隈川の堤防がない地域の解消や支流の堤防強化、グループ化補助金の要件緩和や補助対象の拡充を国と県に要望した。

[郡山中央工業団地] 約189ヘクタールの敷地に251社が立地し、従業員は合わせて約8000人。台風19号では阿武隈川支流の谷田川の氾濫によってほぼ全域が浸水した。被災企業は234社に上り、このうち郡山市が把握している137社分だけでも被害額は383億9530万円。


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2020年01月11日土曜日


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