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宮城県美術館移転案 独自色維持?変わる? 教育機能の議論も必要

創作室でお絵描きを楽しむ親子連れ

 移転案が浮上した県美術館(仙台市青葉区)は1981年の開館以来、誰でも美術制作ができる創作室や子どもの美術教育事業などで特色を発揮してきた。東京エレクトロンホール宮城(県民会館)と集約して一体運営した場合、これまで培われてきた独自色は引き継がれるのだろうか。併せて美術館の在り方を巡る議論も求められる。

■専門職員が対応

 創作室は、2部屋で計約290平方メートル。銅版画、リトグラフを刷れるプレス機が並び、シルクスクリーン製版機は1.8メートルの大版を製版できる。木材加工や溶接器具も備わる。専門職員が対応し、来館者が自由に利用できるオープンアトリエは全国唯一で、利用者は年間で延べ約4000人に上る。
 創作室に18年間通っているという青葉区の銅版画家中村由起子さん(61)は「自由な制作環境はかけがえがない。創作室から巣立った作家は多い。もし移転するとなったら、創作室の精神も受け継がれるのかどうか」と心配する。
 教育事業に力を入れてきたのも大きな特徴だ。小・中学校、高校の要請に応じ、ワークショップや美術館探検を行っており、2018年度は約4700人が参加した。

■先駆的取り組み

 特に人物のブロンズ像の型の制作などに使う大きな塊の粘土をこねるワークショップは全国初で、開館当初から評価が高い。「建物を汚してはいけない」と考えられていた当時、先駆的な取り組みとして視察が相次いだ。月1回の親子を対象にした体験プログラムも15年度に始めた。
 県美術館の元教育普及部長で彫刻家の斎正弘さん(68)=岩沼市=は、開館準備から携わり「一人一人の美意識を育て、世界観を広げるのが美術。教育・作家育成の場として、県の文化向上に寄与できるよう心掛けた」と語る。
 県教委が18年3月に策定したリニューアル基本方針は、「キッズスタジオ」の開設など教育機能の充実を掲げている。ただ、移転案公表で、美術館の役割に関する議論は脇に追いやられた格好となっている。
 河端章好館長は「美術愛好者の裾野を広げることが大切で、次世代を担う子どもたちに積極的にアプローチする。常設展のストーリー性を高め、リピーターを増やしたい」と話す。

[メモ]県美術館の展示観覧者は、常設、特別展合わせて2018年度で13万7800人。過去最多は13年度の30万1500人。東北の各館(18年度)は、青森県美術館20万9500人、岩手県美術館5万7700人、秋田県美術館6万5400人、福島県美術館12万2100人。財団運営の山形美術館5万人。


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2020年02月11日火曜日


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