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国内「見えない流行」顕在化/新型肺炎 東北大大学院医学系研究科 押谷仁教授に聞く

[おしたに・ひとし]東北大医学部卒。1999〜2005年にかけ、世界保健機関(WHO)西太平洋事務局(マニラ)の感染症地域アドバイザーを務めた。05年から現職。東京都出身。専門はウイルス学。60歳。

 中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染拡大が続き、国内でも死者が出た。今後必要となる対策は何か。世界保健機関(WHO)で、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の対策に当たった東北大大学院医学系研究科の押谷仁教授に現状と見通しを聞いた。(聞き手は報道部・菊池春子)

 −現状をどう見るか。
 「感染性は強く、日本国内で既に広がっていた『見えない流行』が顕在化したと考えるべきだ。感染者が重症化したSARSと違って軽症の場合が多く、感染した人が検査の対象とならずに見逃された可能性が高い。見えにくい感染症であり、人類が経験したことのない事態だ」
 「横浜港のクルーズ船に注目が集まったが、乗船客が大部屋で雑魚寝しているわけではなく、特別にリスクが高い環境ではない。武漢が封鎖される前に感染者が入国した可能性がある上、渡航者でも接触者でもない人からの感染が国内で広がっている疑いもある」

 −今後の必要な対策は。
 「多くは軽症で治るとみられる一方、感染が拡大するほど重症者が出る可能性が高くなる。ウイルス性肺炎は集中治療が必要で、感染症指定医療機関だけでは対応できない恐れがある。(複数の市町村でつくる)2次医療圏ごとの備えが大事だ。普段から集中治療室(ICU)のベッドは足りない。緊急でない手術の延期など、踏み込んだ想定が求められる」
 「大きな病院だと安心だからといって、軽症の人まで特定の医療機関に集中すると医療現場が疲弊し、重症患者を救命できない事態になってしまう。受診を迷った場合は、行政の相談窓口に電話してほしい。冷静な対処を促したい」
 「検査体制の拡充も必要。迅速診断キットの開発が急ピッチで進んでいるが、数カ月はかかるだろう。行政だけでなく、民間の検査機関と連携した対応を考えるべきだ」

 −今回の世界的な感染拡大の背景をどう見るか。
 「17年前のSARS流行時と比べ、人々の往来が桁違いにグローバル化している。日本と中国本土との直行便や訪日観光客も増加した。50年前であれば『中国のどこかの地域で謎の肺炎が発生した』ということになるが、人類が制御できないような速さでウイルスが拡散するようになった。グローバル化のリスクの部分への対応を迫られている」


関連ページ: 宮城 社会 新型肺炎

2020年02月15日土曜日


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