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湯治客ら宿泊税に不満沸々 1泊300円「長期滞在ほど負担増」 宮城の鳴子温泉

「長く滞在するほど負担が増すのは困る」と話す湯治客ら=大崎市鳴子温泉

 宮城県が2021年度の導入を目指す1泊300円の宿泊税を巡り、温泉旅館に長期滞在する客から「負担が大きい」と不満の声が出ている。全国有数の温泉地、大崎市鳴子温泉では湯治客に加え、単身赴任者や作業員らが旅館に泊まる。利用者からは「納税する側に恩恵があるとは思えない」など条例案の再考を求める意見が多い。
 鳴子地区の5温泉郷にある約70の宿泊施設のうち、長期滞在用の自炊部屋は少なくても17施設にあり、農・漁閑期を中心に利用者が多い。1泊の素泊まり料は3000〜4000円程度。県の条例案が免税対象とする3000円未満には該当しない。
 自炊部屋の入湯税を1泊70円と定める大崎市の場合、新条例の施行後に1泊4000円の部屋に泊まると、消費税10%と合わせて計770円が課税される。
 気仙沼市の無職鈴木定男さん(85)は「長く滞在すればするほど税金が積み上がってしまう」と憤る。毎年、鳴子温泉郷の旅館に通い、10日間から2週間ずつ滞在する。「年金をためて安い自炊部屋に泊まるのが楽しみだった。新税は県の財政難を責任転嫁している」と訴える。
 石巻市の漁業男性(90)は2月中旬、妻や親類と計4人で東鳴子温泉の旅館に13泊した。「新税分の負担だけで1万5000円を超えてしまう。家族同然の付き合いをしている旅館関係者に恩恵があるとも思えない」と反対する。
 一般の宿泊客からも税に対する疑問の声が上がる。仙台市泉区の無職男性(72)は復興財源を失う県の苦境に理解を示しつつ「新財源の使い道がよく分からない」と話す。
 鳴子温泉にはアパートや貸家が少ないため、単身赴任の公務員や建設現場の作業員、学生が旅館を下宿代わりに使うケースもある。旅館経営者は「新財源の恩恵を直接受けられない客から税金を頂くのは忍びない」とため息をつく。
 県の観光統計によると2018年、鳴子温泉郷の宿泊者は54万1200人で、10年に比べて26.4%減となり、県内の主要観光地で最も落ち込んだ。老朽化した宿泊施設の閉館が相次ぎ、観光振興策の拡充は急務だ。
 県観光課の担当者は「厳しい財政状況の中、観光施策に取り組むために安定的な財源が必要。施策の恩恵は平等に受けることから、宿泊の目的や料金に応じた税率区分は設けなかった」と理解を求める。
 開会中の県議会2月定例会では21日から代表質問が始まり、宿泊税導入の条例案の審議が本格化する。

◎目的や趣旨不明確
 温泉学会(神戸市)の藤田勝利会長(元大阪市立大副学長)の話 新税構想の目的や趣旨が明確でない。宿泊税が導入された東京都などと異なり、東日本大震災の影響が残る宮城県で導入すること自体問題がある。実施するなら事業者や利用者の特徴を考慮し、課税の基準や額、免税の範囲などに配慮すべきだ。


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2020年02月25日火曜日


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