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要支援者名簿作成も実効性に課題 震災教訓に制度化

台風19号豪雨で孤立し、救出される高齢者ら。同様に逃げ遅れた要支援者が各地で亡くなった=2019年10月13日、伊達市

 昨年10月の台風19号による岩手、宮城、福島3県の死者53人(河北新報社調べ)のうち、少なくとも14人が避難行動要支援者名簿に登録されていたことが6日、被災市町村への取材で分かった。名簿は東日本大震災を教訓に制度化された。全国で作成がほぼ終わったものの、実効性を高める工夫が求められる。

 要支援者の犠牲者数は表の通り。「個人情報」を理由に非公表とした市町村も複数あった。
 総務省消防庁によると昨年6月現在、3県の登録数は計32万1849人に上る一方、支援関係者への名簿の提供に同意したのは岩手42.5%、宮城65.1%、福島40.8%にとどまる。介護や障害などの個人情報を明かすことへの抵抗感が背景にある。
 犠牲になった要支援者14人のうち不同意は5人。須賀川市で亡くなった2人も含まれる。市全体の同意率は3割と低迷し、社会福祉課は「要支援者の存在が認識されず、非常時の連絡先も伝わっていない」と危機感を示す。

■避難計画に空欄

 運用面にも課題が多い。国が名簿に基づき策定を求める避難の個別計画に関し、いわき市や郡山市では、原則2人必要な「支援者」が空欄のままのケースがあるという。民生委員らが支援者を探しているが、計画が災害時に有効に機能するか不安が残る。
 災害発生の恐れがある場合、仮に不同意でも緊急的に支援関係者に名簿を提供することは可能だが、危機が迫る中、即行動に移す難しさも浮き彫りになった。
 記録的豪雨に見舞われた宮城県丸森町は、町全域への避難準備情報の発表と同時に支援関係者への名簿提供を開始。行政区長ら4人が指定された建物にたどり着けなかったため、職員が個別に届けようとしたものの冠水や倒木で断念したケースがあった。
 準備情報の1時間20分後には避難勧告に切り替わり、河川氾濫や土砂災害の危険と隣り合わせの業務だった。保健福祉課は「支援関係者の安全確保や要支援者の避難に必要な時間を考慮すると、早いタイミングで提供を始める必要があった」と振り返る。

■具体的基準なし

 国は緊急的な名簿提供に関し、災害の切迫度など具体的な基準を定めていない。「河川が氾濫しそうだからと、個人情報が詰まった名簿を配り、空振りに終わったらどうするのか」(本宮市)と戸惑いの声が漏れる。
 昨年12月、国の中央防災会議は作業部会を設け、台風19号の住民避難の課題を議論。要支援者については本当に支援が必要な人の絞り込みのほか、浸水や土砂災害の危険区域に住む人を抽出してリスクを伝えるなどの対策をまとめる。
 内閣府は「地形などの条件が異なり、災害時の基準を全国一律に決めるのは難しい。平時から名簿提供の同意を増やし、地域の実情に合わせた避難支援の在り方を関係者で考えることが重要だ」と強調する。
(東野滋)

[避難行動要支援者名簿]東日本大震災では犠牲者の約6割を65歳以上の高齢者が占め、障害者の死亡率も被災者全体の約2倍に上った。国は2013年に災害対策基本法を改正し、自力避難が困難な「要支援者」の名簿作成を市町村に義務付けた。市町村は要介護度や障害等級などの要件を設け、対象者を登録。本人の同意を得て名簿を民生委員や消防団などに提供し、避難支援に生かす。19年6月現在、全国の市町村の98.9%が作成した。


2020年03月07日土曜日


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