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災害公営住宅での孤独死 気付かれないケースが後絶たず

会合で亡くなった入居者に黙とうをささげる自治会役員ら=1月31日、岩手県陸前高田市
災害公営住宅に入居する高齢者を訪問する阿部さん(左)ら=2月25日、宮城県南三陸町

 災害公営住宅の孤独死が住まいの復興に影を落とす。周囲との関わりを失い、何日も気付かれないケースが後を絶たない。東日本大震災の被災地では住民組織などが防止に挑む。

■陸前高田 孤独死防げず無念の思い、住民自治に停滞感も

 「絶対に孤独死は出さないと言ってきたのだが…」。陸前高田市の紺野和人さん(68)が唇をかむ。同市の岩手県営災害公営住宅「栃ケ沢アパート」で自治会長を務める。
 70代の入居男性が1月中旬、部屋で死亡しているのが見つかった。1人暮らし。集合ポストにたまった配布物などから死後1カ月以上の可能性もあった。
 仮設住宅にいた時、男性は近所の誘いで食事会などにも顔を出していた。付き合いが途絶えたのは災害公営住宅への入居後。携帯電話には誰の番号も登録されていなかったという。
 昨年12月には自治会費の集金時に会えなかったり、回覧板が滞ったりした。だが、異変の情報は共有されなかった。
 戸数301の栃ケ沢アパートは災害公営住宅としては県内最大だ。2016年8月以降、市内外から被災者が入居した。岩手大などの支援を受けながら半年以上かけて自治会を設立。住民の発案で多様なサークルも発足した。
 班長は毎月交代し、自治会役員の任期も1年とする。持続的な運営を目指し、負担の平準化で広く自治意識を育む試みだった。ただ議論を交わしてゼロから築き上げた当初と比べ、停滞感は否めない。
 働き盛りを中心に宅地の引き渡しを受けたり、家賃の引き上げを敬遠したりして退去する動きもあるという。自治会の担い手となる世代が減りかねない。
 船戸義和岩手大特任助教は「自治会の見守りや外部の関与を強めれば、孤独死を減らせるかもしれない。ただ、住民が疲弊したり、人任せになったりして地域力の強化につながらない」とジレンマを口にする。
 悲劇を防ぐ特効薬は見つからない。1月31日にあった会合で、紺野さんは「声掛けをしてほしい」と念押しするしかなかった。
(大船渡支局・坂井直人)

■南三陸 日々の積み重ね大切、互助つながり促す

 孤立しそうな住民をいかに地域につなぐか。町民の約1割が災害公営住宅で暮らす宮城県南三陸町で模索が続く。
 見守り活動を行う町社会福祉協議会の生活援助員(LSA)阿部若子さん(59)は1月、町内の災害公営住宅に住む1人暮らしの男性から相談を受けた。路上で倒れて手足がしびれ、身の回りのことができなくなったという。
 阿部さんが隣の高齢夫婦に事情を説明すると、夫婦は自主的に昼食を差し入れるなどしてくれた。男性は「普段付き合いはなかったが助けられた」とほっとした表情を浮かべる。阿部さんは「こうした活動の積み重ねが住民同士で支え合う関係につながる」と話す。
 阪神大震災では公的支援員が被災者の個別支援に力を入れた結果、一部の住民同士で見守る関係を構築するのが難しくなった。被災者と支援員の依存関係が生まれたためだ。
 LSA事業を受託する町社協の高橋吏佳地域福祉係長(47)は「個別支援と互助の関係をつくる地域支援はシーソーのような関係。本来、住民同士でやれることをLSAが奪ってはいけない」と強調する。
 同町の福祉アドバイザーを務めた本間照雄東北学院大特任教授(福祉社会学)は「都市部の神戸に比べ、東北はコミュニティーに頼れる素地がある。集会所を生かすなどして顔なじみの関係をつくることが大事だ」と話す。
(南三陸支局・佐々木智也)


2020年03月04日水曜日


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