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<非行少女のあした>繰り返す万引と自傷行為 少年院を出た後に…

スタッフらと入所者の暮らしぶりについて話し合う中山さん(左)

 未成年で窃盗や覚醒剤使用などの罪を犯し、少年院での生活を経て更生に向けて歩む女性がいる。多くが幼少期に家族から虐待を受けた経験を持ち、成人した後も精神的、経済的に自立できずにもがいている。消せない過去や深い心の傷−。女子少年院の出院者らの証言を基に、彼女たちを希望へと導く道しるべを探る。
(報道部・大芳賀陽子)


 名取市に住むエリさん(仮名、28歳)の左腕には、無数の切り傷がある。かつて繰り返した自傷行為の痕だ。
 幼いころから、家計は苦しかった。両親は定職に就けず、給食費を滞納しがちに。小学校の同級生から「貧乏人」といじめられた。
 小学3年の時、空腹に耐えかねて、コンビニの菓子パンに手を出した。以来、万引を繰り返した。
 しばらくたつと、決まって罪悪感にとらわれた。いつからか、カミソリを手に自ら腕を傷つけるようになったという。

 仲間と民家に空き巣に入ったところを警察に逮捕され、18歳で女子少年院に入った。少年院を出た後は、アルバイトとして飲食店で働いた。会計を任されても、目の前のお金に目がくらむことはなかった。
 22歳で結婚。直後から、夫の暴力に悩まされた。気に入らないことがあると「少年院を出たお前を相手にしてやっているのに」と殴られた。顔にあざができ、仕事に行けなくなった。
 ある日、コンビニに立ち寄ると、ポケットに菓子を入れて店を出た自分がいた。「私、変わってないんだ」。涙が止まらなかった。
 エリさんを救ってくれたのは、勤め先の飲食店の店長だった。仕事を休みがちになると、心配し家に来てくれた。夫からエリさんを守るため別居を勧め、離婚話にも同席してくれた。
 店長の助言もあり、エリさんは離婚。今も同じ店で働いている。「あのままだったら、また盗みを繰り返して、刑務所に入っていたかもしれない。助けてくれる人がいて幸運だった」とエリさんは振り返る。

 「少年院を出た後の少女らの人生を、見守る存在が必要だ」。県内で親の虐待など家庭に問題を抱える子どもらを対象にした自立支援ホームの施設長を務める中山崇志さん(39)はこう話す。
 同ホームは少年院を出た男女も受け入れている。入所者は半年程度、職員の指導や助言を受けながら集団で生活し、就職活動などにも当たる。
 少年院を出た若者は、保護観察期間が終われば自立を迫られる。成人後の相談窓口となるNPO法人や自治体などの支援機関にサポートを求めることは、初対面の相手に自分の恥をさらすことになり、ハードルが高いとされる。
 多くの出院者と接してきた中山さんは、少女らとの距離の取り方に悩みながら「気軽につながり続けられる存在でありたい」との思いを強くしている。

[メモ] 法務省の犯罪白書によると、2018年に全国の女子少年院を出た150人のうち約7割は、親が引受人となった。さまざまな事情で家庭に帰れない場合は、更生保護施設や福祉施設に入ったり、雇用主が引受人になったりする。
 13年の女子少年院出院者(313人)は、6.4%が再び罪を犯すなどして出院後5年以内に再入院するか、刑務所などの刑事施設に入った。


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2020年03月19日木曜日


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