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<せんだい進行形>独自の理念が成長の秘訣 アイリス、総合家電メーカー目指す

幹部が一堂に会する新商品開発会議=9日、角田市

 生活用品メーカーから総合家電メーカーへ−。アイリスオーヤマは2023年のグループ売上高1兆円の達成を目指し、家電に注力している。09年に発光ダイオード(LED)電球を発売して本格参入。19年12月期の単体売上高では、LED照明を含む家電事業の割合が59%を占めた。成熟市場とされる業界で売り上げを伸ばす秘訣(ひけつ)とは。独自の理念に基づいた開発の現場をのぞいた。(報道部・高橋公彦)

◎即決 開発会議その場で押印

 「他の商品も手掛けないと(売り上げが)伸びないところにきている。次に展開する商品を早く選ばないといけないぞ」
 角田市の拠点施設で9日開かれた新商品開発会議。海外向け季節家電の新商品を提案した担当者に、階段状の席の最前列に座る大山晃弘社長が指示を出す。
 年間約1000点の新商品は全てここから生まれる。毎週月曜日、テレビ会議による参加を含めて役員や開発、販売関連の部署の責任者約70人が集結。大山社長が提案を了承すれば、その場で決裁印を押す。
 「同業他社ならいくつもの決裁が必要だが、当社は社長のはんこ一つで全ての物事が動く。幹部が一堂に会して全社的に情報共有することも相まって、商品化のスピードが速くなる」(同社幹部)という。
 会議は午前9時から午後5時近くまで続く。持ち時間は1案件につき数分。始めに結論、内容説明は後、などの決まりがある。提案は2段階で、主に商品の概要を諮る企画提案と、工場への設備投資などを判断する原価提案がある。
 企画提案では、大山社長が消費者にとって使い勝手が悪いと判断すると突き返す。原価提案では、想定原価や投資回収の時期といった試算の詰めが甘いと指摘が入る。
 同社は発売後3年以内を新商品に分類し、売上高に占める割合の目標を50%以上に掲げる。2009年以降は一度も下回ったことがなく、19年は前年比2ポイント増の64%まで引き上げた。
 ロングセラーに頼らず、移り変わる消費者ニーズに素早く応えることが成長の原動力。広報室の中嶋宏昭マネジャーは「次々と新商品を生み出すには、開発者が提案しやすい企業風土が欠かせない。幹部がそろう開発会議は、社長が商品に関する責任を負うということを全社的に示す場でもある」と説明する。

◎着眼 生活の不満解消に尽力

 両手が自由に使える「置き型」ドライヤー、部屋干しの乾燥時間を短縮するサーキュレーター(送風機)付きの衣類乾燥除湿機、よそったご飯のカロリーの目安が分かる炊飯器…。
 アイリスは、消費者の不満を解消するような独自機能を備えた家電を「なるほど家電」と銘打つ。飽和状態の家電市場でヒットを続ける要因に、生活用品メーカーとしての強みがある。
 同社の開発は、掃除や洗濯、調理など消費者がやる事を中心にした「コト軸」で進める。洗濯であれば、脱衣から干して畳むまでの中で、どこに困り事があるかを探す。その結果、室内物干し、サーキュレーター付き除湿機といった商品が生まれてきた。
 家電事業部の石垣達也統括事業部長は「生活用品メーカーでもあり、便利であれば開発するのは家電でなくてもよい。コト軸で考えることでアイデアが出てくる」と語る。
 2019年9月、魚や肉の両面焼きが手軽にできる容器を付けた電子レンジを発売。ガスコンロのグリルが洗いにくいという声を受け、15年に売り出した商品を進化させた。「調理の時間を短縮したい」という声に応え、容器の上下に搭載したプレートがレンジのマイクロ波で食材を加熱。裏返す手間をなくした。単身や共働き世帯に売れているという。
 石垣部長は「家電は成熟市場とされるが、共働きの増加などで消費者の好みが多様化している。ニーズに合った商品開発ができればまだまだ成長のチャンスはある」と強調する。
◎経験 大手の技術者積極採用

 アイリスの家電開発をけん引するのは、約100人の家電開発部員の8割を占める大手電機メーカーなど他社からの中途採用者だ。
 同社は大手が衰退する中で家電事業に参入した。当初の開発拠点は角田市だけだったが、2013年に大阪、18年には東京に研究開発拠点を構え、大手で経験を積んだ技術者の採用を強化。早期退職者や、現場で働きたい管理職などが手を挙げるようになった。
 TV・OA機器事業部開発チームの武藤和浩部長は東芝で33年間、映像製品を手掛けてきた。早期退職の募集に応じ、16年にアイリスに転じた。武藤部長は「アイリスの家電はシンプルな機能で値頃。大手は高機能で高額という違いがある」と指摘する。
 同社は開発段階で店頭価格を決め、消費者がほしい機能に絞って搭載。値頃感のある価格帯に収める。一方、大手は「固定費が高い上、競合他社が搭載する機能を盛り込んで高額化する」(業界関係者)という。
 アイリスが18年11月に発売した液晶テレビは、4K放送などに対応する32〜65型。最も大型で高性能な4K対応でも15万円程度で、大手メーカーより約3割安い。武藤部長は「余計な機能を削って価格を抑えた。高齢者など『テレビ番組が見られればよい』と考える層にヒットした」と語る。
 昨年11月には音声操作ができる4Kテレビも発売。今夏の東京五輪に合わせ、さらなる新商品を開発中だ。武藤部長は「4Kチューナー内蔵型を考えている。アイリスを大手と並ぶ家電メーカーにしたい」と意気込む。


2020年03月20日金曜日


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