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大野病院の再開見通せず 避難解除でも進まぬ帰還 福島県、慎重姿勢崩さず

再開のめどが立たない福島県立大野病院。避難指示が解除されたが、建物は天井からの水漏れなど傷みもあるという=福島県大熊町

 東京電力福島第1原発事故後に指定された帰還困難区域の一部が今月上旬、福島県内の3町で相次いで解除された。JR各駅と接続道路以外で唯一解除範囲に含まれたのが、事故で休止している大熊町の県立大野病院だ。「帰還の促進には病院が必要」と再開を切望してきた町に対し、県は経営難などから慎重姿勢を崩さず、9年を経てもなお先の見えない状態が続く。
(会津若松支局・玉應雅史、福島総局・斉藤隼人)

 内堀雅雄知事は16日の定例記者会見で「将来、再開させるとの思いはある」と従来方針を改めて表明。避難解除を受け内部を調査すると明らかにしたが、再開時期は明言しなかった。
 原発事故前、大野病院は浜通り地方唯一の県立病院として5診療科150床を備え、地域医療の中核を担った。県が再建をためらう背景には住民帰還の厳しい現実がある。
 町の避難指示は2019年4月に初めて一部解除された。1年たって居住する町民はわずか156人。ほとんどが高齢者で、大野病院の医療圏8町村でも事故前の人口約6万は1万余に激減した。県立病院は09年度に全体で17億3000万円を赤字計上した過去があり、事故は統廃合を含む病院改革のさなかに起きた。
 県病院局の五十嵐明次長は「総合病院として再開するにはそれに見合うだけの人口が必要」と語る。
 県は18年4月、町中心部から約7キロ離れた同県富岡町にふたば医療センター病院(30床)を開設。県幹部は取材に「安心して帰還してほしい」と前置きした上で「医療需要は現状でカバーできている。なかなか病院を二つというわけにはいかない」と打ち明けた。
 ただ、医療センターは救急を除けば内科のみ。大熊町民からは「診療科目が少なく、結局(遠方の)いわき市や南相馬市の病院に行かざるを得ない」と声が漏れる。
 人材確保の面でも壁がある。双葉郡を含む相双地区の医療人材の有効求人倍率は4.96倍(県平均2.69倍)。5病院が1人を取り合う深刻な水準だ。
 町は医療再建と密接な将来の地域づくりを描く。吉田淳町長は「周辺の町村も大野病院の再開を望んでいる。早期再建を引き続き県に求めたい」と話した。
 地域医療や自治体病院の経営に詳しい城西大の伊関友伸教授(行政学)は「医療センターと大野病院の両方を維持するのは現実的とは言えない」と指摘。
 当面はセンターで診療科目や病床数を充実させ、人口の回復を見守ることを提案した上で「5年、10年先の地域医療の在り方を浜通り全体で真剣に考えていく必要がある」と言う。


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2020年03月23日月曜日


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