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鶴岡沖にヒメアカタテハの大群飛来 国内で初確認 渡りの謎解明に一助

日本海上の釣り船に大量に飛来したヒメアカタテハ=昨年8月5日午前2時ごろ、山形県鶴岡市鼠ケ関沖(大類さん提供)

 世界に広く分布するチョウで、欧州では大陸間を集団移動することで知られる「ヒメアカタテハ」の大群が昨年8月5日未明、山形県鶴岡市鼠ケ関沖の日本海に飛来していたことが29日、分かった。国内でヒメアカタテハの渡りの現場が確認されたのは初めてとみられ、専門家は「渡りの謎を解明するために注目すべき事象だ」と驚いている。

 飛来が確認されたのは午前1〜3時ごろ、鶴岡市鼠ケ関の西約17キロ、新潟県の離島「粟島」(粟島浦村)の北約17キロの海上で、大瀬と呼ばれる山形県側の天然礁の周辺。自然史研究会「鶴岡自然調査会」副代表幹事の大類雄一さん(71)=鶴岡市=が釣り船の上で遭遇し、スマートフォンで写真撮影した。
 大類さんによると、船は集魚灯をつけていて、午前1時ごろに周囲にヒメアカタテハが舞い始めた。やがて手で払っても飛び立たないほど増えていき、止まった電線が太く見えるほど大量に集まった。大類さんは「数え切れないが、数千匹から1万匹はいたと思う。普段は人影さえ恐れるのに密集し、尋常ではない感じだった」と振り返る。
 気象庁の観測では、飛来した時間帯の風向きはおおむね鼠ケ関で無風に近い南風、粟島で無風に近い西風。気温は26〜27度。降雨はなかった。
 大類さんを乗せた釣り船「長栄丸」の船長富樫正彦さん(56)=新潟県村上市=は「同じような場所で風のない夜に大量のガが集まってくることがまれにあった。あれもチョウだったのかもしれない」と語る。
 大阪府立大大学院生命環境科学研究科の竹内剛研究員(動物生態学)によると、国内では1960年代に陸から約500メートルの海上でヒメアカタテハが夜間に飛来した記録が2例あるが、いずれも1匹ずつだった。
 大阪市立自然史博物館の長田庸平学芸員(鱗翅目(りんしもく))は「真夜中に集団で移動する事象は記録にない。北上する渡りの途中だったと考えられる」と指摘する。
 東京大総合研究博物館の矢後勝也助教(昆虫自然史学)は「写真を見て衝撃を受けた。国内の移動の実態は分かっていない。深夜に飛んでいたのだとしたら、ヒメアカタテハの調査の進んだ欧州でも報告されていないはずで、移動の謎を解明する一助になるかもしれない」と話す。

[ヒメアカタテハ]世界に広く分布するチョウで、日本国内でもほぼ全域に生息する。成虫が羽を広げた大きさは4〜5センチ。飛行は素早く、人の気配に敏感。春に生まれると1年の間に数世代が発生を繰り返しながら北海道まで北上する。秋には個体数が増え、寒冷地では冬を越せず死滅する。欧州、アフリカの大陸間では、春に北アフリカで発生。世代交代しながら英国や北欧まで分布を広げ、秋にはアフリカ大陸に戻るという。


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2020年03月30日月曜日


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