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台風19号半年 現地再建か移転か、宮城・大崎の志田谷地住民苦悩 

移転に伴う自宅の解体が進む大崎市鹿島台の志田谷地地区。夕暮れ時、明かりもまばらにともる=3月31日
浸水した自宅の解体作業が進む=2日

 昨年10月の台風19号豪雨で185世帯が浸水した大崎市鹿島台の志田谷地地区で、被災した住民が現地再建か移転か、難しい選択を迫られている。被災住宅の解体が本格化する中、水害再来を懸念して移転を検討する人々が増えており、地区からは先行きを不安視する声も聞かれる。
 「子どもや孫に同じ経験をさせたくない」
 床上2メートルも浸水した自宅で、会社員星義幸さん(53)が泥に漬かった家具やかつて長男長女が遊んだおもちゃに視線を落とした。
 今月末にも自宅の解体を始めるが、現地再建するかどうか決めかねている。現在は避難先の借家で妻(53)、父(79)と3人暮らしだが、将来、子どもたちが家を継いだ時のことを考えてしまうからだ。
 住民によると、地区では1986年の「8.5豪雨」など過去にも水害に見舞われたが、移転する人はわずかだった。だが今回は水害再来を心配する40〜50代を中心に、20〜30世帯が移転を検討しているという。
 高齢化も影響する。大正時代に建てられた自宅が全壊し、解体した清野計一さん(85)は「ご先祖様には申し訳ないが、もう戻れない」。昨年12月にJR鹿島台駅近くのアパートに移り住み、妻(86)と2人で暮らしている。
 農業を営んだが、近年は田畑の管理を知人に頼んだこともあり、生活の再開を優先した。こうした世帯は土地への執着も低い。清野さんは「若い時は水害に遭っても家族や近所と協力して再建できたが…」と悩ましげに振り返る。
 市によると、鹿島台地域の住宅解体の公費助成申請は93件に上る。市は高台に災害公営住宅20戸を建設する方針を決定。分譲地の整備も計画中だが、再建費用への不安もあって整備戸数は確定していない。
 住宅解体に伴い、住宅街に空き地が目立ってきた。地元では「数十年後、地区が残っているのか」との声がささやかれる。
 行政区長の農業板垣勝さん(81)は「みんな今後の生活を考えた上で決断し、誰も責められない。行政に頼るだけではなく、残った住民で結束しなければならない」と思いを吐露した。
(小牛田支局・山並太郎)


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2020年04月12日日曜日


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