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高校生の山村留学、確かな手応え 岩手・葛巻高

葛巻高の公営塾で勉強する生徒=2月下旬

 岩手県葛巻町が地元の県立葛巻高(生徒131人)への入学者を全国から募集する「くずまき山村留学制度」が軌道に乗ってきた。酪農体験メニューや町営進学塾が好評で、2020年度は「留学生」が前年度比で倍増した。県外出身者の岩手定着も後押しする。

◎酪農体験や公営塾好評

 「人が優しくてのんびりしている。将来は葛巻に住みたい」。川崎市出身の松本拓馬さん(18)は話す。この春卒業し、ホテル経営の岩手ホテルアンドリゾート(盛岡市)の調理部門で勤務する。
 酪農に興味があって葛巻高を選んだ。町内の牧場での牛舎掃除、餌やり体験が良い思い出だ。町が用意した宿舎で同じ山村留学生と集団生活を送った。先輩との相部屋で上下関係を学び、掃除は当番制で朝晩は点呼もある。規則正しい毎日だった。
 川崎市で通った中学校には1学年約300人いたが、葛巻高の同級生は46人。松本さんは「先生との距離が近く、丁寧に教えてもらえた」と振り返る。
 町は少子化で存続が危ぶまれる葛巻高の生徒を増やそうと、15年度に留学制度をスタートさせた。15〜19年度に計21人を受け入れ、19年度の在籍数は16人。20年度は一気に16人が入学し、計29人とほぼ倍増した。出身地も12都道県に広がっている。
 町はホームページや都内でのPR活動を展開しており、19年度に高校で開いた説明会には、中学生と保護者計約60人が詰め掛けた。町教委の担当者は「寄宿舎の食事も地産地消。学びの環境を整える本気度が伝わっている」と話す。
 特に県外生へのアピールポイントが、町が17年度に葛巻高のセミナーハウスに開校させた公営塾だ。全国で学習塾を展開する「Birth(バース)47」(東京)に委託し、葛巻高の生徒は無料で利用できる。
 個別指導や映像授業が好評で、17年度に50人だった登録者は19年度77人に増加。岩手大のほか横浜国立大など首都圏の難関大へ進学する動きも出始めている。
 山谷淳也塾長(40)は「都市部の塾に行かなくても難関大合格や希望する進路をかなえる用意をしている。地域愛を深め、将来は葛巻に帰ってきてもらえるようにしたい」と語る。

◎岩手で受け入れ拡大 態勢に課題も

 岩手県内の過疎地の県立高では県外生を募集する動きが広がっている。県教委は2020年度、5校増やして計9校で県外枠を設置した。各校が魅力づくりに取り組むが、受け入れ態勢に課題は残る。
 遠野高(遠野市)は地元企業と連携したゼミが目玉だ。特産ホップの活用やスポーツによる地域振興などをテーマにゼミを選び、1年間研究に取り組む。
 鈴木徹副校長は「生徒自ら地域課題を発見して解決する。既に県内外の高校が見学に来ている」と誇る。
 大槌高(大槌町)は本年度、仲介できる下宿先が見つからず入学者を獲得できなかった。「学校近くに下宿業者がいない。来年度に向けて町に整備してもらいたい」と訴える。
 アピールの方法も手探りが続く。平舘高(八幡平市)は現在ホームページのみで告知。「隣県の教委にも呼び掛け、効果的な宣伝を考えたい」と模索する。


関連ページ: 岩手 文化・暮らし

2020年04月20日月曜日


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