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新規格「防災ISO」提案へ 東北大災害研、23年発効目指す

防災ISOの構想を語る今村所長

 防災に関する国際認証制度の実現に向け、東北大災害科学国際研究所(仙台市青葉区)は官学民の有志と連携し、国際標準化機構(ISO)が20〜24日に開く国際会合に、新規格となる「防災ISO」を提案する。今後、水害ハザードマップの配色を統一するなど、防災の設備や製品、サービスを保証する国際ルールづくりを本格化させ、早ければ2023年の発効を目指す。

 災害研は今年1月、仙台市、日本規格協会(東京)、経済産業省などと国内準備委員会を設立。防災ISOの必要性や現行制度の課題を報告書にまとめた。ISO国内委員会は3月下旬、新規格実現の第一歩となる国際会合への報告書の提出を認めた。
 想定する災害は地震、津波、水害、土砂のほか、気候変動に伴う干ばつや火災、飢饉(ききん)も含む。新規格の対象は備蓄物資、緊急速報メール、地震計・加速度計、ハザードマップ、避難所運営などと幅広い。
 新規格の基本理念は「地産地防」。古今東西の被災地で培われた防災の知恵や人材、技術を基に最低限必要な国際標準を定めた上で、各地域の実情に合わせて仕様を変更し、備えに役立ててもらう。
 15年に仙台市で開催された第3回国連防災世界会議では、30年までの国際指針「仙台防災枠組」が採択された。新規格により枠組が掲げる「ビルド・バック・ベター」(より良い復興)、多様な当事者が防災に関わる「マルチステークホルダー」といった理念の具体化を後押ししたい考えだ。
 ISOによる会合は当初、スウェーデンで開かれる予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響でウェブ会議になった。会合で報告書が認められると、ISO国際委員会にワーキングループ(WG)が設置される。国内準備委は今後、WGに提出する防災ISOの原案をまとめる。
 災害研の今村文彦所長は「東日本大震災の被災地発の防災ISOをつくることで、国内の防災ビジネスの創出につなげ、産業振興と国内外の防災力向上に貢献したい。住民は基準を満たした防災の製品やサービスを通して、家庭や地域で安全安心を確保できるようになる」と話す。

[国際標準化機構] スイスに本部を置き、略称はISO。国際的に通用する規格を制定する。世界中の製品やサービスの質をそろえ、取引しやすくすることを目指す。環境活動を管理するための仕組みについても規格を設けている。

◎「認識の差 国内外で解消」今村文彦所長

 防災ISOの実現を目指す東北大災害科学国際研究所の今村文彦所長に、新規格の必要性や期待できる効果を聞いた。

 −自治体ごとに各種ハザードマップを公表し、防災情報を提供している。
 「例えば水害のリスクを示すハザードマップには津波と洪水があるが、同じ自治体でも浸水深を示す色がばらばらなケースが目立つ。災害ごとに色の表す意味が違っては、いざという時に誤解や混乱が生じかねない。国内外で認識を一致させるメリットは大きい」
 −自然災害の切迫時や発生時には、自治体から緊急速報メールが届く。
 「自治体によって日本語だけだったり、読み返せなかったりと仕様が異なり、改善の余地がある。誰もが使いやすいように機能をそろえるだけでなく、迅速な避難につなげるには、地図情報の標準化が不可欠だろう。旅行客や外国人にも伝わりやすくなる」
 −避難所では被災者の心身の健康維持が求められる。
 「避難所運営の主体は住民だが、地域によって知識や技術に差がある。一定水準を満たすために必要な食料、レイアウト、感染症対策などを具体的に示すべきだ。プライバシーの確保をはじめ避難所環境の質は海外の方が高い。世界標準を持ち込むことで、国内の環境を改善したい」
 −備蓄物資のガイドラインの現状は。
 「栄養素は厚生労働省、カロリーは農林水産省、保管は総務省・内閣府が定めている。これらを統一し、自治体の規模や少子高齢化といった地域特性に応じた基準を設け、実効性の高い備蓄を目指す。東日本大震災では被災した太平洋側の自治体を日本海側が支えた。隣接自治体からの後方支援もあらかじめ計画に組み込むことを提案する」
 −震災10年を迎える被災地では、伝承の重要性が増している。
 「語り部活動や伝承施設は、現地の被害を伝える上で大切な役割を果たしている。一方で防災の視点から、伝える側に知ってほしい基礎知識もある。例えば津波の前に引き波があった地域があれば、なかった所もある。災害の多様性を理解できるように、伝承方法についても被災地間の連携を義務付けたい」


2020年04月20日月曜日


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