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公海サンマ漁、東北の大型船出航せず 前倒し可能もロシアとの取引不調「行っても赤字」

昨年6月に大船渡市魚市場に水揚げされ、注目された初夏のサンマ。今年は例年通り、8月以降となりそうだ

 昨年から前倒し操業が可能となった北太平洋公海でのサンマ漁に、東北の大型船が全く出向いていない。漁獲したサンマを購入するロシア側との価格交渉が調わず今季は取引しないと決まったことが要因で、需給のミスマッチを指摘する声もある。どの船も8月に漁期に入る日本近海での通常操業に照準を合わせている。
 「漁場が遠く、国内に水揚げしても燃料代にもならない。行っても赤字になるだけだ」
 大船渡市の鎌田水産の鎌田仁社長(46)が厳しい表情を浮かべる。昨年は第8三笠丸など3隻が公海に向かったが、今季は出漁しないことを決めた。
 全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま、東京)によると、昨年は5〜7月に5003トンを公海で漁獲。うち9割を洋上でロシアの加工船に販売した。
 漁獲量は試験的に操業した前年の6割弱にとどまり、1キロ当たりの価格も18円安い60円だった。漁期に先立ち、全さんまや各地のサンマ船の船主がロシア側に単価の引き上げを求めたが、交渉は折り合わず今年は洋上取引をしないことが決まった。
 鎌田社長は「採算が合えば雇用や収入面で漁業者にメリットがあるが、価格が上向かないと公海での漁は難しい。今年は通常操業に全力投球する」と語る。
 採算性以外の課題もある。昨年の本州初水揚げは6月だった。例年より2カ月早く、需要が高いと言えない時期に当たる。
 今年の公海での操業を断念した今野水産(石巻市)の担当者は「旬の時期から外れるため、加工業者の受け入れ態勢が整っていない。水揚げ自体を拒否する港もあった」と説明した。
 気仙沼港(気仙沼市)を母港とする北海道様似町の第63幸漁丸も出漁を見合わせた。石見勝美漁労長(71)は「昨年は採算が合わない船が大半だった。サイズも小さく、買い手がいなければ仕方がない。来年以降も需要次第だ」と話す。
 公海でのサンマ漁には、近年の深刻な不漁を背景に、加工業者への安定供給やサンマ漁の存続につなげる狙いがあった。
 全さんまの大石浩平専務理事は「今季は交渉がまとまらなかったが、日本側もロシア側も公海での操業、洋上取引を続ける意思はあり、話し合いを続ける。まとまった漁獲が期待できれば、公海でのサンマ漁に向かう漁業者が出てくるのではないか」と好転に期待を寄せる。

[公海でのサンマ漁]ロシアの排他的経済水域でのサケ・マス流し網漁が禁止となった代替措置として、2016年に試験操業が始まった。サンマ漁の通年操業を可能にする省令改正を受け、19年から5〜7月に公海で本格操業した。19年は岩手や宮城、北海道などの20隻が、従来の漁期(8〜12月)から前倒しで出漁した。


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2020年05月20日水曜日


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